波乱のWRCベルギーでタナクが2連勝。トヨタのエバンスを僅差で振り切り今季3勝目をマーク

 8月21日、ベルギー西部のイープルを中心に開催されたWRC世界ラリー選手権第9戦『イープル・ラリー・ベルギー』の競技最終日、デイ4のSS17~20が行われ、ヒョンデ・シェル・モビスWRTのオット・タナク/マルティン・ヤルヴェオヤ組(ヒョンデi20 Nラリー1)が優勝。前戦フィンランドに続く連勝で今シーズン3勝目を飾った。

 今季序盤に行われた第3戦ラリー・クロアチラ以来、ひさびさのターマック(舗装路)イベントとして開催されたイープル・ラリー・ベルギー。WRC開催2年目となる今大会では有力選手たちのクラッシュが相次いだ。

 中でも衝撃的だったのは、ドライバー選手権で首位を独走しているカッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)の初日デイリタイアだ。トヨタに所属する21歳のフィンランド人ドライバーは、今シーズンここまで8戦5勝という圧倒的な強さをみせ、条件が揃えばここベルギーで残り4戦を残してタイトルを確定させる可能性があった。しかし、デイ1午前のSS2でコースを外れて激しくロールするクラッシュを喫したことで、イープルでの初戴冠はお預けとなっている。

 そんなアクシデントが発生したラリー初日を総合首位で終えていたティエリ・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)、前年大会で2位表彰台を獲得したクレイグ・ブリーン(フォード・プーマ・ラリー1)も2日目にデイリタイアとなった。母国ラウンドでの2連覇を目指していたヌービルのアクシデントは、地元ベルギーのファンにとっては大きな衝撃だったはずだ。

 ロバンペラ、ヌービルと立て続けにラリーリーダーが戦線を離脱するなか、デイ2終盤に新たなリーダーとなったのは前戦の覇者タナクだった。彼は競技2日目の午前中にトランスミッションにトラブルを抱えたものの総合2番手のポジションを守り、チームメイトが消えたSS15で総合トップに浮上した。同ステージと続くSS16でベストタイムを記録した彼は、総合2番手につけるエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)とのタイム差をわずかに拡げてデイ2を終えた。

 競技3日目、最終日に向かう段階での両名のギャップは8.2秒。4本のSSで合計距離は51.34kmと、ステージも距離も少なくはあるが、逆転の可能性は充分にある差だ。

 迎えたデイ3、オープニングのSS17はエバンスがベストタイムを記録し、タナクが2番手に続く。タイム差は7.1秒に縮まった。続くSS18も同様の結果となり6.7秒差で午後のループに入ることとなった。

エルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第9戦イープル・ラリー・ベルギー
WRCデビューを果たしたヨス・フェルスタッペン(シトロエンC3ラリー2)

■初日総合18番手に沈んだ勝田貴元は5位入賞

 その午後の1本目となったSS19は、タナクが反撃に出てベストタイムをマークした。対するエバンスはステージ3番手でライバルから0.5秒遅れてしまう。7.2秒のギャップとなって勝負は最後のSS20へ。

 この最終パワーステージでは、先にアタックに入ったエバンスが僚友ロバンペラに次ぐステージ2番手タイムを記録してタナクの到着を待つ。最終走者のタナクは4km過ぎのスプリットタイムではエバンスを上回ったが、徐々に遅れていき最終的には2.2秒のプラスでフィニッシュ。この結果、両名のタイムは5.0秒に縮まったが“貯金”を有効に利用したタナクがリードを守り、前戦フィンランドに続く2連勝を飾った。

 表彰台の最後のひと枠を確保したのは、激しい優勝争いの後ろで“ひとり旅状態”にあったエサペッカ・ラッピ(トヨタGRヤリス・ラリー1)。彼も2戦連続の3位フィニッシュとなっている。

 総合4位はオリバー・ソルベルグ(ヒョンデi20 Nラリー1)。彼はMスポーツのアドリアン・フルモー(フォード・プーマ・ラリー1)とポジションを争っていたが、ライバルがSS19でクラッシュしたことで、こちらも最終SS20では前後の差が開いたなかでの走りとなった。

 初日のギアボックストラブルでの遅れから、前日に総合6番手まで順位を上げてきていた勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合5位でフィニッシュ。パワーステージでは5番手タイムをマークし、ボーナスの選手権ポイント1点も獲得している。

 総合6位には今戦のWRC2クラスウイナーとなったステファン・ルフェーブル(シトロエンC3ラリー2)が入り、同2位のアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)、同3位ヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)が続く総合トップ8リザルトとなっている。

 選手権ランキングではドライバー部門首位のロバンペラ(203pt)と2位タナク(131pt)の差が72ポイントに縮まった。一方、マニュファクチャラーズ部門では首位TOYOTA GAZOO Racing WRT(381pt)と2位ヒョンデ・シェル・モビスWRT(293pt)のポイント差は「88」から変わっていない。

 いよいよシーズン終盤戦に突入するWRCの次戦第10戦は、9月8~11日に開催されるアクロポリス・ラリー・ギリシャだ。グラベル(未舗装路)ステージで争われる同ラリーにはシリーズ9冠王者セバスチャン・ローブの出場も決定している。

オット・タナク/マルティン・ヤルヴェオヤ組(ヒョンデi20 Nラリー1) 2022年WRC第9戦イープル・ラリー・ベルギー
勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第9戦イープル・ラリー・ベルギー
オリバー・ソルベルグ(ヒョンデi20 Nラリー1) 2022年WRC第9戦イープル・ラリー・ベルギー
アドリアン・フルモー(フォード・プーマ・ラリー1)は総合5番手で迎えたSS19でクラッシュを喫した
エサペッカ・ラッピ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2022年WRC第9戦イープル・ラリー・ベルギー
ステファン・ルフェーブル(シトロエンC3ラリー2) 2022年WRC第9戦イープル・ラリー・ベルギー

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