旧村上ファンド系が大量買い付け−−「物言う株主」増加で注目したい大量保有報告書

2022年8月15日(水)、ジャフコG(8595)に対し旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンス、南青山不動産、及び村上世彰氏の娘である野村絢氏による大量買い付けが判明しました。
※参照:ジャフコGウェブサイト「会社支配に関する基本方針及び当社株式の大規模買付行為等に関する対応方針の導入に関するお知らせ」


買い増しによるファンドからの企業への提案

シティインデックスイレブンスらは8月15日(月)までに同社株を11.87%保有し、今後51%まで保有比率を高める可能性を示唆しました。また、同社が保有する野村総研(4307)株の流動化などを行った上で、約500億円の自社株買いをすべきだと要請、これに対しジャフコ側は、対応策として新株予約権の無償割り当てなどを検討すると発表しました。

上記した旧村上ファンド系投資会社のシティインデックスイレブンスは、2020年4月から西松建設(1820)の株式を買い増しして、虎ノ門ヒルズなど保有不動産の売却などの資産効率化策や、大規模な自社株買いなどの株主還元策を巡って対立してきました。

そして2021年9月に発行済み株式の27%を上限に自社株TOBを発表しました。シティインデックスイレブンスはそのTOBに応募する事で合意しました。その他、島忠(8184)、新生銀行(8303)などの株式も買い増しにより成功させています。

このような買い増しによる企業への提案(エンゲージメント活動)は旧村上ファンド系だけではなく、オアシス・マネジメント、シルチェスター・インターナショナル、ブランデス・インベストメントなどが有名です。

なかでも、オアシス・マネジメントは、2017年に東芝の第三者割り当てを引き受け、2021年4月に英国の投資会社CVCキャピタル・パートナーズが東芝に買収提案を出した際に「株価が安すぎる」と株主として積極的に意見を表明しました。

また2020年9月、三井不動産が東京ドームをTOB(1株1100円)で買収を発表しました。東京ドームの筆頭株主であったオアシスは、東京ドームの経営改革が進んでいないことを不服とし、社長を含む役員3人の解任を求めて会社側と対立していました。三井不動産によるTOBは、オアシスに対する「ホワイトナイト」としての役割があったと言われています。

「物言う株主」が増加

今年に入り、経営に積極的に関与する投資家「アクティビスト(物言う株主)」から株主提案を受けた企業が増加傾向にあります。2022年に株主提案を受けた企業は36社に上り、過去最多を更新しました。

物言う株主が、どのような企業を大量に購入したのかを知る方法として、「大量保有報告書」というものがあります。大量保有報告書とは、国内外の投資家が上場企業の発行済み株式数の5%超を取得した場合に、必ず5営業日以内に管轄の財務局に提出しなければならない法定書類の事です。また、一旦、提出した後も保有比率に1%の増減があるたびに「変更報告書」を提出する義務が生じます。

この報告書の主な記載内容は、(1)提出者の名前、(2)保有目的、(3)保有株式数、(4)提出後の保有比率、(5)付随の重要契約などがあります。ここで、私が注目しているのが、(1)提出者の名前と(2)保有目的です。

提出者には、証券会社や大手運用会社などが主な機関となります。しかし、最近は投資ファンドなどアクティビスト(物言う株主)による大量保有報告書の提出も増加傾向にあります。保有目的について大手運用会社などは「純投資」や「政策投資」が多いのですが、投資ファンドなどは「純投資及び状況に応じて重要事項提案等を行う」と保有目的に記載する事もあります。

「重要提案行為等を行う」とは経営陣や株主総会で「役員の構成の重大な変更」や「配当政策に関する重要な変更」などを提案する行為です。企業側は投資ファンドの要求を受けざるを得ない状況から、増配や株価還元策などを公表する場合もあります。

大量保有報告書は金融庁の「エディネット」やM&Aオンラインで閲覧できます。投資判断の一つにもなりそうです。

最後に最近シティインデックスイレブンスが買い付けている銘柄群をお伝えします。シティインデックイレブンスの保有銘柄は、東亜建設(1885)、ジャフコG(8595)、コスモHD(5021)、セントラル硝子(4044)、ホシデン(6804)などです。

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