『ロータス・エリーゼGT1』英国の誇るライトウエイトスポーツが大変身【忘れがたき銘車たち】

 モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、『ロータス・エリーゼGT1』です。

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 強靭なエンジンを搭載しなくても、軽量なシャシーを最大の武器にするスポーツカー。そんなスポーツカーを生み出してきたロータスの創設者、コリン・チャップマンのアイデンティティを体現したような1台が『ロータス・エリーゼ』だ。その『エリーゼ』がラインアップの刷新によって、『ロータス・エキシージ』などと共に2021年に生産終了となった。

 『エリーゼ』のファーストモデルである“シリーズ1”が登場したのは、今から26年前の1996年のことだった。それとほぼ同時期に、『エリーゼ』のフォルムを残しながら“魔改造”といえるモディファイを施した『エリーゼ』の“レーシングバージョン”が登場したことをご存じだろうか。それが『ロータス・エリーゼGT1』である。

 『エリーゼGT1』はその名が示す通り、1990年代中盤にル・マン24時間レースなどのメインカテゴリーとなったGTカーベースのレーシングカー『GT1』の車両として誕生した1台だった。

 そもそもロータスは、『ロータス・エスプリ』をベースにしたGT1マシンを、かつてロータスF1チームに携わっていたスタッフを中心に製作し、GT1マシンで争われるBPR GTグローバルシリーズに参戦していた。『エスプリ』は速さを見せ、時折結果を残したもののリタイアも多かった。その『エスプリ』に代わるウエポンとして、『エリーゼGT1』が開発された。

 『エリーゼGT1』は、シャシーこそ市販車の『エリーゼ』のアルミシャシーをベースにしていたものの、全幅と大幅を拡大。そして、『エスプリ』のものをベースとしたツインターボの3.5リッターV8エンジンを縦置きで搭載するためにホイールベースも延長されていた。

 前後のライト類は、市販車の『エリーゼ』のものを使用していたため、その面影を残しながらも、『エリーゼGT1』のデザインは市販車とは大幅に異なるものとなった。当時のライバルであった『マクラーレンF1 GTR』の1997年モデルや、『ポルシェ911 GT1』のようなデザインのGT1マシンへと変貌したのだった。

 その後、『エリーゼGT1』はエンジンの信頼性の問題などもあり、シボレー製の6.0リッターV8エンジンに換装され、実戦へとデビュー。1997年のFIA GT選手権やル・マン24時間レースにエントリーした。しかし、『メルセデスCLK-GTR』や『ポルシェ911 GT1』、『マクラーレンF1 GTR』といった強力なライバルたちの前には歯が立たなかった。

 後に『エリーゼGT1』をベースとし、クライスラー製の6.0リッターV10エンジンを搭載した『BITTER GT1』という派生車種も現れたが、基本的には1997年のみで『エリーゼGT1』は役目を終えることになってしまった。

FIA GT選手権シリーズの1戦だった1997年の鈴鹿1000kmを戦った『ロータス・エリーゼGT1』。タイ航空がスポンサーになったフランスのファースト・レーシングが走らせたこの車両は、ラタナクル・プルティラット、ジェローム・ポラカン、ファビアン・ジロワがドライブした。

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