つらい思いを共有 相模原の元ケアラー、自宅開放しカフェに 来訪者3000人

自宅の一部を開放しカフェを開く山田由美子さん(左)と夫の豊徳さん

 介護や看病が必要な家族や身近な人を介護する「ケアラー」の心のよりどころにしてもらおうと、相模原市南区の山田由美子さん(65)が自宅の一部を開放し、カフェを開いている。2018年11月のオープン以来、訪れた人は約3千人に上る。かつてケアラーだった山田さんは「私のようにつらい思いをしている人の力になりたい」と力を込める。

 カフェではハーブティーやコーヒーを飲みながら、山田さんや元ケアラーのボランティアたちが個別に不安や悩みを聞く。介護経験者だからこそ分かり合えることは多い。山田さんは「深刻そうな表情だった人が、帰るころには笑顔になっていることもある。私も相談できる人がいたら違っていたはず」と語る。

 山田さんは38歳から15年間、脳梗塞を患った母親を介護した。夫は仕事で忙しく、2人の息子の子育てもあった。休む時間もなく一人で介護に追われる中、「いつまで続くのか」と出口の見えない日々に不安を募らせるようになり、うつ病を発症した。

 症状は悪化し、動悸(どうき)に悩まされるようになり、料理や家事もできなくなった。「毎日が精いっぱいで、自分のことは後回しになっていた」と山田さん。母親は2010年に亡くなり、数年たったころ、当時の自分の置かれた状況を冷静に考えられるようになったという。

 カフェを開くきっかけとなったのは、自分と同じように一人で介護を抱え、悩んだり苦しんだりする人から相談を受けるようになったからだった。相談する人は地域の住民も多く「つらい思いをしている人の力になりたい」と、自宅の一角にカフェをオープンした。

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