WEC富士で「勝つ必要がある」7号車のコンウェイが挙げるタイトル防衛に望みをつなぐポイント

 TOYOTA GAZOO Racingのマイク・コンウェイは、WEC世界耐久選手権におけるタイトル防衛の希望を維持するためには、彼と小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペスの7号車トヨタGR010ハイブリッドのクルーが富士6時間レースで「勝利する必要がある」と語った。

 ル・マン・ハイパーカー(LMH)規定の下で、2021年に開始されたWECハイパーカークラスの初代王者となったコンウェイたちは、全6戦で争われる今季の第4戦モンツァを終えた段階でランキング3位に位置し、アルピーヌのニコラ・ラピエール/マシュー・バキシビエール/アンドレ・ネグラオ組から30ポイント、トヨタ8号車を駆るセバスチャン・ブエミ/平川亮/ブレンドン・ハートレー組にも20ポイントの差をつけられている。

 2022年シーズンの残るレースはふたつ。そのうち、最終戦バーレーン8時間はレース時間が長いため通常よりも多くのポイントを獲得できるが、コンウェイは7号車トリオのタイトル防衛に向けては次戦のWEC富士が重要になると考えている。

 トヨタの7号車は開幕戦セブリング1000マイルでシャシー交換を余儀なくされるほどの大クラッシュを喫しノーポイントに終わった。以来、コンウェイらはこの遅れを挽回しようと努めている。

 彼らは第2戦スパで優勝し、ル・マンでは2位表彰台を獲得。モンツァでは3位となった。これはアルピーヌとトップ争いを繰り広げるなかで、可夢偉がバキシビエールと接触し90秒のペナルティを受けたことが影響した。

 そんな7号車がふたたびタイトルを獲得するには、9月9~11日に富士スピードウェイで開催されるトヨタの“ホームラウンド”で勝利することが近道だが、残り2戦のうち、どちらかでアルピーヌが表彰台圏外でレースを終えることも必要だ。

「富士の後、バーレーンでの僕たちの役割が何かわかるようになるだろう」とコンウェイはSportscar365に語った。

「他のマシンに何が起こるかによるが、まだ大きな開きがあるかもしれない。明らかなのは、僕たちには強いものが必要だということ。富士で勝たなくてはならないということだ」

「仮にチームメイトが2位、アルピーヌが3位になっても、(アルピーヌには)それなりのポイント差があり、追いかけるにはまだ大きなギャップがある。シーズン序盤に多くのポイントを失ったのは残念だが、アルピーヌは非常に強く、安定している」

「スパでは8号車にアンラッキーなことがありポイントを失ってしまった。それによってアルピーヌがランキングで前に立ち続けている。僕たちにできることは毎週末、最大限に力を発揮することだけだ」

「バーレーンに行って、チャンピオンシップのためにあるチームが他のチームを助けなければならないとしたら……僕らはチームだから、そういうことをするつもりだ。でも、日本では可能な限り多くのポイントを獲得するつもりだ。それが僕らのできるすべてだからね」

7号車のチームメイトである小林可夢偉、ホセ-マリア・ロペスとともにWECタイトル防衛に臨むマイク・コンウェイ

■新型デフの影響はモンツァよりも小さいと予想

 コンウェイは、アルピーヌが今シーズンにLMH規定車よりもはるかに軽い“グランドファーザーLMP1”で競争力を高めたことが、「競争という意味では良いこと」と述べ、2021年シーズンを席巻したトヨタは「つねに用心している」と語った。

「(彼らは)昨年はもっと苦労していたが、タイヤとの相性が良くなっているようだ」とコンウェイ。

「公平に見て、彼らはいい仕事をしている。ただし、2台の異なるクルマのバランスを取るのは難しいんだ」

 コンウェイはモンツァで導入されたトヨタGR010ハイブリッドの新しいオープンディファレンシャルへの適応の課題が、富士ではそれほど厳しくなくなることを期待している。このデフは、IMSAの次世代ハイブリッド・プロトタイプカーであるLMDh車両がWECハイパーカークラスに加わる来季に備えて、第4戦で導入されたものだ。

 トヨタの新しいデフはロック式に代わるもので、モンツァではブレーキング時のハンドリングに難があった。しかし彼は、富士はイタリアのオールドサーキットよりも適していると予想している。

「デフのセットアップが変わると、確かにいろいろなことが変わる」とコンウェイは説明した。

「(対応するには)ドライビング・テクニックが必要だけど、富士には同じようなセットアップで行くので、少なくともモンツァで得た知識がある」

「モンツァのマシンはトリッキーだったが、週末が進むにつれて改善されていったと思う」

「モンツァは本当に高速で、ブレーキも重要になるサーキットだ。だから、もしどのサーキットでも影響を受けるとしたら、モンツァはそれらのリストの上位に入るだろうね」

「一方、富士はそれほど悪くないと思う。ターン1には大きなブレーキングエリアがあるが、それ以外はタイトでツイスティなものばかりだ。少なからず影響はあるだろうけど、モンツァほど厄介にはならない考えている」

アルピーヌとの接触で右リヤタイヤとボディワークにダメージを負った、小林可夢偉駆る7号車トヨタGR010ハイブリッド 2022年WEC第4戦モンツァ6時間
ターン14でクラッシュしひっくり返った7号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing) 2022WEC第1戦セブリング1000マイル

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