上場企業3,795社 女性役員は641人増の3,575人、初の3,000人台 ~ 2021年度決算「女性役員比率」調査 ~

  2021年度(21年4月期-22年3月期)の上場3,795社の女性役員の比率は9.0%で、前年度の7.4%から1.6ポイント上昇した。3,795社の役員総数は3万9,601人で、前年度の3万9,144人から457人増加(前年度比1.1%増)した。このうち、女性役員数は3,575人(前年度比21.8%増、前年度2,934人)で、全体の伸び率を大幅に上回り、初めて3,000人台に乗せた。

 上場3,795社のうち、女性役員ゼロは1,443社(構成比38.0%)で、前年度(1,693社、構成比45.7%)から7.7ポイント低下した。前年度、女性役員数がゼロだった1,693社のうち、2021年度に女性役員を登用した上場企業は311社(構成比18.3%)だった。一方、前年度は女性役員がいたが、2021年度に女性役員がゼロになったのは21社。
 産業別は、女性役員比率は4年連続で10産業すべて前年度を上回った。最高の小売業の11.4%(前年度9.1%)を含め、4産業が10%以上だった。最低は建設業の7.6%(同6.6%)で、小売業と建設業の女性役員比率の差は3.8ポインに拡大した。
 女性役員比率が最高の上場企業は、無線通信・応用機器メーカーのユニデンホールディングスの60.0%。役員5人のうち、社外取締役に女性役員3人を登用し、前年度(10.0%)から50.0ポイント上昇した。女性役員比率50.0%以上は7社で、前年度(5社)から2社増えた。
 2021年6月11日、東京証券取引所などは改訂コーポレートガバナンス・コードを公表し、上場企業に多様性の確保に向けた人材育成方針を求めた。また、機関投資家は女性役員の有無を投資判断の一つにしている。上場企業の女性役員数は増えたが、社外取締役への登用が多いのが特徴だ。社内外を問わず就任後の貢献度など、役員の機能チェックが問われることに変わりはない。

  • ※本調査は東京証券取引所など、すべての証券取引所に株式上場している企業のうち、7月31日までに有価証券報告書を提出した2021年度(2021年4月期-2022年3月期)決算を対象に、有価証券報告書の役員状況に記載された男性・女性の人数を集計、分析した。
    本調査の「役員」は、「会社法上の取締役、監査役」および「執行役」などを対象にした。
    業種分類は証券コード協議会の定めに準じる。

女性役員ゼロは1,443社、構成比は38.0%に低下

 2021年度の上場3,795社の役員総数は3万9,601人で、このうち女性役員数は3,575人(前年度比21.8%増、前年度2,934人)に増え、初めて3,000人を突破した。
 女性役員比率は9.0%で、前年度の7.4%から1.6ポイント上昇した。一方、女性役員がゼロは1,443社(前年度比14.7%減、前年度1,693社)で、構成比は38.0%と前年度(45.7%)から7.7ポイント低下した。
 女性役員比率が前年度より上昇したのは978社(前年度851社)、低下は328社(同310社)だった。前年度と同比率は2,355社(同2,414社)で、全体の64.3%を占めた。

女性役員

産業別 女性役員比率10.0%超が4産業

 産業別の女性役員比率は、4年連続で10産業すべて上昇した。
 女性役員比率の最高は、小売業の11.4%(前年度9.1%)。次いで、水産・農林・鉱業11.28%(同8.8%)、電気・ガス業11.26%(同10.9%)、金融・保険業10.8%(同9.8%)と続く。
 女性役員比率が10%以上の4産業のうち、水産・農林・鉱業、小売業、金融・保険業の3産業が初めて10%台に乗せた。女性役員比率の最低は、建設業の7.6%(同6.6%)だった。ただ、女性役員数は141人で、前年度の123人から18人増加した。
 女性役員数の増加率では、最高が運輸・情報通信業の前年度比28.1%増(444→569人)。以下、サービス業の同24.7%増(392→489人)、小売業の同23.9%増(301→373人)の順。
 女性役員ゼロ比率の最高は、不動産業の44.8%(前年度53.7%)。女性役員ゼロは、前年度の71社から61社に減少した。次いで、卸売業43.8%(同50.4%)、運輸・情報通信業40.1%(同47.7%)で、初めてすべての産業で50.0%を下回った。
 女性役員ゼロ比率の最低は、水産・農林・鉱業の11.1%(同27.7%)。18社のうち、2社(同5社)に減少した。次いで、電気・ガス業の12.0%(同8.3%)、金融・保険業の19.8%(同23.9%)の順。

女性役員

市場別 女性役員比率トップは東証プライムの11.4%

 市場別の女性役員比率は、最高が東証プライムの11.4%(前年度9.2%)で、前年度から2.2ポイント上昇した。役員総数が2万1,100人(同2万1,333人)に減少するなかで、女性役員は2,406人(同1,974人)と432人増えた。以下、名証ネクスト10.3%(女性役員11人、前年度7.9%)、東証PRO10.0%(同1人、同10.0%)、東証グロース9.1%(同342人、同7.8%)、札証アンビシャス9.0%(同5人、同10.0%)の順。最低は福証の2.9%(同6人、同2.9%)。
 女性役員ゼロ比率は、 最高は名証メインの78.5%(前年度83.3%)。42社のうち、33社が女性役員ゼロだった。次いで、札証77.7%(同77.7%)、福証73.6%(同73.6%)の順。
 一方、女性役員ゼロ比率の最低は、東証PROの0.0%(同0.0%)。
 国内外の機関投資家は、女性役員が1人もいない企業に取締役選任案で反対票を投じることを検討する動きが広がっている。
 グローバル展開する企業が多い東証プライムは、女性役員比率が高く、女性役員ゼロの企業は18.9%(536→342社)と前年度から10.7ポイント低下した。

女性役員

個別企業 ユニデンHDが女性役員比率60.0%でトップ

 女性役員比率は、最高がユニデンホールディングス(東証プライム)の60.0%で、前年度の10.0%から大幅増となった。役員5人のうち、女性役員は3人(社外取締役)を占める。
 2位は、女性役員比率50.0%で、老人介護ホーム運営の光ハイツ・ヴェラス(女性役員4人)とコンビニ経営のローソン(同5人)、書店経営の三洋堂ホールディングス(同5人)、コミュニケーションツール提供のAI CROSS(同3人)、ストレージ製造のニューテック(同4人)、バイオベンチャーのセルシード(同3人)の6社。
 女性役員比率が50.0%以上は7社(前年度5社)、40.0%以上50.0%未満は12社(同10社)、30.0%以上40.0%未満は73社(同41社)など、ここ数年、女性役員の比率は着実に上昇している。

女性役員

 

 2021年度の上場3,795社の女性役員数は3,575人で、初めて3,000人を突破した。女性役員数は、2017年度(1,560人)からの4年間で2.2倍に増え、着実に女性役員の登用は進んでいる。
 ただ、女性役員ゼロは1,443社(構成比38.0%)と約4割あり、一気呵成といかない現実もある。
 2021年3月、経団連は『2030年30%へのチャレンジ(#Here We Go 203030)』で、ポストコロナを見据えた「新成長戦略」を打ち出した。多様な価値の包摂と協創に向け、「多様な人々の活躍促進」への取組みの具体的な目標として「2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」ことを掲げている。
 機関投資家も女性役員がいない上場企業は、代表者の取締役選任案に反対する動きも出ている。一方、前年度に女性役員ゼロで2021年度に女性役員を登用した311社(人数341人)のうち、社外役員での登用が286社(構成比91.9%、312人)だった。社外取締役で水増しされた女性役員とならないように、数値だけでなく実態にも目を向けることが必要だ。
 社外取締役を含めて、役員はガバナンスの強化だけでなく、新しい視点や柔軟な発想で成長を実現する権限と責任を問われることを忘れてはいけない。

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