他者を尊び、分かち合い、助け合う これからの時代を生き抜く「協創力」を育む

2025年に創立60周年を迎える城西大学。就任3年目となる藤野陽三学長は、大蔵大臣(現財務大臣)などを歴任した創立者の水田三喜男が唱えた建学の精神「学問による人間形成」を、21世紀における「協創力の育成」と読み解きます。他者の人格を尊重し、互いの特徴を活かして学び合い、助け合いながら社会のさまざまな課題を解決できる人間、「協創力」のある学生を育てることが城西大学の役割だと強調します。藤野先生に今後の城西大学の目指す姿や学び、学生に対する思いについてお話していただきました。

「競争」から「協創」へ

インターネットによって情報が瞬時に全世界へと伝えられる状況が生まれ、あらゆるところで国や地域を越えた「競争」が激しくなりました。その結果、世界中で格差や分断が拡がっています。今、世界が抱えている問題の多くは、すべての国や地域の人々が協力して新しいアイデアを生み出さない限り解決できなくなっています。

これからの時代は「競争」して勝つことより、持続可能な社会を協力し、助け合い、創り上げていく「協創」の精神が求められているのです。地球温暖化問題だけでなく、地域や食糧、環境の問題なども世界中のみんなが協力して解決策を創造していくことが重要です。

私たちは世界の中で様々な人たちと生きています。他者を尊重し、尊敬し、共に学ぶ中で解決策を追求していくことが「学問による人間形成」です。ですから、コンペティションの「競争」ではなく、みんなと分かち合って協力し、創造するという「協創」を建学の精神に基づく新たな考え方として大切にしたいのです。私立大学としてこの大学がなぜつくられたのか、創立者の水田三喜男先生の想いを私自身が私の言葉で学生に伝えていきたいと考えています。

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23号館(JOSAI HUB)に集う学生たち[/caption]

様々な人々が交流する拠点として

城西大学は埼玉県の私立大学としては数少ない総合大学の一つです。経済・経営・現代政策の文系学部と理学・薬学の理系学部、そして短期大学の学生が一つのキャンパスで学んでいます。

自然豊かな美しい高麗川のほとりに位置する坂戸市けやき台のキャンパスやその周辺には、陸上・野球・サッカー・テニス・ゴルフなどの様々なスポーツを楽しむ施設を完備し、2022年3月には坂戸キャンパスの新しい顔となる23号館(通称JOSAI HUB)の講義室エリアも完成しました。

大きな庇の下に学生・教職員が日常的に集いながら自然な交流を生み出す坂戸キャンパスは「知の交流」の拠点として、あらゆる方角から人の流れを受け入れ、まさに結節点「ハブ」としての機能を果たします。

ガラスパーテーションで「見える化」を促進した開放的な講義室のほか、カフェやラウンジ、そしてアクティブラーニング・プレゼンテーション・自習など多様な「学びの場」と学生の「居場所」を設け、学生からも好評です。2023年9月には正門や守衛所などを整備してグランドオープンも予定しています。

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23号館(JOSAI HUB)と中央広場などの完成予想図[/caption]

→これからの社会を生きていくために必要な学びを

これからの社会を生きていくために必要な学びを

城西大学は2021年4月に「数理・データサイエンスセンター」を発足させ、文理を越えた教育プログラムを策定。特に新入生を対象に「データサイエンス入門」を開講し、学生はこれからのデータ駆動型の社会で生きていくために欠かせないスキルを身に付けています。

また、大学での学びをスムーズに開始させるための初年次教育、学部学科の境界・ハードルを越えるリベラルアーツ教育やキャリア教育、地域の問題解決に取り組む少人数・探究型のセミナーなどの充実も図っています。

オープンな環境整備をさらに進め、学びにも大学や学部の「枠」を超えた横のつながりが生まれるような機会もつくっていきたいと考えています。

例えばテーマを設定し、学部を問わず学べるような講義を通して様々な考えに触れられる機会を設けたり、埼玉に位置する大学としての地の利を生かし近隣の大学や地域社会、地元企業とのコラボレーションなどを実施することで、学生の中に眠っている興味・関心を顕在化させたい。

実際にこのような学部横断型産学連携教育プログラムも始まっています。学生自身が「これやってみたい」「おもしろい」と実感したり、少しでも自信をもてる経験ができれば、それが思いもよらぬ力を発揮して学びを深める原動力となるからです。

高校生へのメッセージ

「サラダみたいな大学」です

「協創力」を育てるには「仲間」が必要です。城西大学には部活動やボランティア、資格取得学習など、「仲間」と出会うための様々な機会が用意されています。

また、23号館には先生や学生が集い、語らい合うことのできる広々とした空間が数多くあります。教職員、ゼミやサークルの仲間と自由な雰囲気の中で様々な意見を出し合い、一緒に世の中の問題について解決方法を探り、場合によっては行動に移す。このような学びによって皆さんたちの「協創力」が育まれるでしょう。

サラダは色も形も味わいも違う素材が隣り合い、その上でそれぞれの個性をちゃんと残したまま一つのおいしさを一緒につくっています。まるで「サラダみたいな大学」、それが城西大学の目指す姿です。

世の中は正しい、正しくないでは割り切れない問題もたくさんあります。教科書に沿って「正しいこと」を教わるだけでなく、多くの問題に立ち向かえるよう、生涯学び考え続ける方法をここで身に付け、主体的に仲間と協創できる力を是非とも養ってください。

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ゼミで学生と語り合う藤野学長[/caption]

城西大学・城西短期大学 学長

藤野 陽三

専門は土木工学、特に長大橋梁などのインフラの計画・建設・保全防災。レインボーブリッジなど内外の数多くの橋に関わる。1972年、東京大学工学部土木工学科卒業、74年、同修士課程修了、76年、ウォータールー大学(カナダ)博士課程修了、77年、東京大学地震研究所助手。筑波大学構造工学系助手、講師を経て82年、東京大学工学部助教授、90年、同教授、2013年、東京大学名誉教授。14年、横浜国立大学先端科学高等研究院上席特別教授。20年、横浜国立大学名誉教授。20年4月、城西大学学長、22年4月、城西短期大学学長兼務。07年、紫綬褒章。19年、日本学士院賞。

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