ウクライナ侵攻から半年

 睡眠の「眠」という字は目と民でできている。民が眠りこけて、目が横になれば、たちまち「罠(わな)」に変わる▲裏返せば、ぱっちり開いた民の目が、例えばこっそり民を操ろうとする権力者の「罠」を封じる手だてになる。国民にその監視役ができればいいが、ロシアでは最高権力者が「本当の景色」を隠し、民の目を覆っている▲ウクライナ侵攻開始から半年。「占領は考えていない」とプーチン大統領は初めに言い放ったが、実際は南部を制圧し、ロシアへの編入を狙っているとみられる▲前にもここで触れたが、街はがれきの山と化し、警報が響き渡るウクライナのさまに「往時の戦争を思い出し、心が痛い」と、多数の方が本紙オピニオン欄に声を寄せている。同じ思いの人は世界中にいるのだろう▲それなのにロシアでは、悲痛なさまが国内できちんと伝わらない。攻撃が「住民保護のため」という言い分に化ける。米国と、ロシアのエネルギーに頼る欧州との足並みの乱れも、プーチン氏の「罠」ならぬ「思うつぼ」だろうか▲大戦後、旧ソ連によってシベリアなどに抑留された犠牲者を悼む式典がきのう、東京であった。生き延びた人が、ウクライナ侵攻を「悲劇が繰り返されている」と悔しがったという。声に耳を澄まし、目はしっかり見開いておきたい。(徹)

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