1ドル=137円 企業の半数が経営に「マイナス」 機器メーカーは強気、アパレルや飲食店は影響広がる  ~ 2022年8月 「円安に関するアンケート」調査 ~

 6月初めから1ドル=130円以上の円安相場が続いている。7月14日に一時139円台まで下落した為替レートは、8月19日に136円台まで戻したが、依然として円安基調で推移している。
 東京商工リサーチ(TSR)が8月1日~9日に実施したアンケート調査では、7月中旬の1ドル=137円前後の円安で、経営に「マイナス」と回答した企業は48.7%とほぼ半数を占めた。前回調査(6月、1ドル=130円前後)の46.7%から2.0ポイント悪化した。
 規模別では、「マイナス」は大企業が42.6%に対し、中小企業は49.8%だった。前回調査からそれぞれ4.9ポイント、1.6ポイントずつ悪化し、大企業でも円安の恩恵を得にくい内需型産業を中心に上昇傾向にある。業種別は、「繊維・衣服等卸売業」(89.2%)、「飲食店」(81.8%)、「家具・装備品製造業」(81.2%)の3業種で「マイナス」の回答が8割を超えた。製品や原材料の仕入を輸入に依存する企業を中心に、円安がもたらす物価高の影響が深刻化している。
 一方、輸出企業の約3割(29.5%)は前年より輸出量を「増加(予定含む)」と回答し、円安を好機ととらえて業績拡大を目指している。ただ、円安が「プラス」とする企業は全体の3.2%にとどまり、円安によるコストプッシュが企業活動にじわりと影響を広げている。
 FRB(米連邦準備理事会)が利上げ継続を示唆する一方で、日銀は金融緩和を維持しており、円安是正の見通しは立っていない。コロナ禍や資源高、ロシアによるウクライナ侵攻など、世界の先行きが不透明ななか、行き過ぎた円安は大きな経営リスクのひとつになっている。

  • ※本調査は、2022年8月1日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,907社を集計、分析した。
    資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
    前回調査は、2022年6月14日発表。

Q1.今年7月(1ドル=137円前後)の為替水準は貴社の経営にとってプラスですか?マイナスですか?(択一回答)

円安が「マイナス」、中小企業の49.8%

 1ドル=137円前後の円安が経営に及ぼす影響について、「マイナス」と回答した企業は48.7%(5,907社中、2,879社)だった。前回調査(6月、1ドル=130円前後)の46.7%からは2.0ポイント悪化した。
 一方、「プラス」の企業の割合は3.2%(190社、前回調査3.0%)、「影響はない」は28.8%(1,702社、同28.4%)だった。
 規模別では、「マイナス」は大企業が42.6%(884社中、377社)に対し、中小企業は49.8%(5,023社中、2,502社)で、中小企業が7.2ポイント上回った。
 前回調査からそれぞれ4.9ポイント、1.6ポイント上昇した。

円安アンケート

業種別 円安で「繊維・衣服等卸売業」の約9割が「マイナス」

 Q1で「プラス」、「マイナス」と回答した企業をそれぞれ業種別(業種中分類、回答母数20以上)で分析した。
 「プラス」と回答した業種トップは「業務用機械器具製造業」の12.9%(62社中、8社)で、前回調査(6月)の16.0%から3.1ポイント低下した。以下、「輸送用機械器具製造業」11.1%(90社中、10社)、「はん用機械器具製造業」10.5%(104社中、11社)と続く。
 機械製造業を中心に一部業種で「プラス」の影響もあるが、円安による原材料の輸入価格上昇などで上位3業種を除き、「プラス」の構成比は1割未満にとどまった。
 一方、「マイナス」と回答した業種トップは「繊維・衣服等卸売業」の89.2%(56社中、50社)だった。前回調査の80.3%を8.9ポイント上回り、円安の影響が深刻化している。
 次いで、「飲食店」81.8%(33社中、27社)、「家具・装備品製造業」81.2%(32社中、26社)の順。3業種は「マイナス」が8割を超えた。
 円安による製品や原材料の調達コスト上昇が、売上や収益に影響しているようだ。

円安アンケート

Q2. 貴社にとって望ましい円相場は1ドルいくらですか?(択一回答) 

希望レート「110円以上125円未満」の企業が75.1%

 望ましい円相場について、2,877社から回答を得た。最多レンジは、「110円以上115円未満」の29.9%(862社)だった。前回調査(6月)でも同レンジが最多の39.3%だったが、円安の長期化に伴い9.4ポイント低下した。次いで、「115円以上120円未満」22.6%(653社)、「120円以上125円未満」22.4%(646社)の順。希望レートが「110円以上125円未満」のレンジの企業が75.1%を占めた。
 中央値は規模に関係なく115円(前回調査110円)だった。
 1ドル=130円以上の円安水準が定着し、企業の希望レートレンジは徐々に円安に振れつつあるものの、希望レートを130円以上と回答する企業は3.9%(115社)にとどまる。為替相場は原材料価格の上昇を招いており、輸出入企業以外への影響も懸念される。

Q3.今年に入ってからの為替変動の影響について伺います。貴社は、商品や部材の輸出量を昨年より変化させましたか?(択一回答) 

輸出企業の約3割が輸出量を「増加」へ

 輸出を手掛ける1,122社から回答を得た。
 「増加させた」は13.0%(146社)、「現時点で変化ないが、今後増加させる」は16.4%(185社)で、合計29.5%が輸出量の「増加」に言及した。
 輸出量「増加」の業種別(中分類、母数5以上)では、「飲料・たばこ・飼料製造業」(16社中、10社)と「運輸に附帯するサービス業」(8社中、5社)がそれぞれ62.5%で最多だった。
 上位10業種のうち、製造業は5業種、卸売業は4業種だった。

円安アンケート

Q4.今年に入ってからの為替変動の影響について伺います。貴社は、商品や部材の輸入量を昨年より変化させましたか?(択一回答)

輸入量「減少」は2割にとどまる

 輸入を手掛ける1,844社から回答を得た。
 「減少させた」は13.3%(246社)、「現時点で変化ないが、今後減少させる」は9.1%(169社)で、合計22.5%が輸入量の「減少」に言及した。円安は輸入企業には不利だが、仕入の代替先の確保が難しいケースもあり、輸入量「減少」は約2割にとどまった。
 輸入量「減少」の業種別(中分類、母数5以上)では、「木材・木製品製造業」の61.9%(21社中、13社)が最多だった。

円安アンケート

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