旧統一教会との接点、全国会議員712人に聞いてみた【全回答の一覧付き】FAXで回答続々、認めた117人の8割近くは自民党  「政治家はお墨付きへの想像力を」

 共同通信社は7~8月、安倍晋三元首相を除いた全国会議員712人を対象に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わりを尋ねるアンケートを実施した。回答を寄せた594人のうち何らかの接点があったと認めたのは与野党双方の計117人。自民党は79・5%に当たる93人に上った。無回答だったり、回答内容があいまいだったりした議員でも、記者会見などで関与を公表したケースもあり、実際にはさらに多い。信者による「霊感商法」や多額の献金が社会問題化した教団と、政権与党との密接なつながりが浮き彫りになり、秋の臨時国会の焦点にもなりそうだ。
 アンケートの集計では、オンラインとFAXの双方で回答を受け付けたところ、350人以上がFAXで返信。国会議員が「デジタル」より「紙」になじみを感じる様子も垣間見えた。(共同通信取材班)

 【各議員の詳しい回答は以下のURLから】

  https://digital.kyodonews.jp/static/diet/questionnaire/list0.html

 ▽大臣やベテランも、1年生議員でも接点

(手前から)衆院第1議員会館、衆院第2議員会館、参院議員会館=2019年2月21日撮影

 アンケートは7月27日、衆参両院議員712人の国会事務所に質問状を配布するとともに、メールアドレスが判明している事務所にはメールも送信。8月5日を期限としたが、締め切りを過ぎても本稿公開時点までに取材班に届いた回答も合わせ、594人分を集計した。回答率は83・4%。
 アンケートでは教団やその友好・関連団体との関係を質問した。(1)献金やパーティー券購入(2)選挙活動の支援(3)イベント出席や祝電―の有無を尋ねたほか、こうした団体に政治家が支持を表明することについてどう考えるか自由に記述してもらった。一方で、教団と関係が深いとされる「世界日報」の取材を受けたかどうか、は尋ねなかった。
 自民党は回答した284人のうち32・7%に当たる93人が教団側との接点があると認めた。結果は次のグラフの通り。

 関係性に濃淡はあるものの、つながりがあった中には閣僚経験者やベテランだけでなく、当選1回目の議員も含まれていた。接点のあった時期については「30年以上も前」から2022年7月の参院選まで幅広い。国会議員になる前の地方議員時代に教団側から接触があったことを明かした議員もいた。

 ▽「丁寧な説明が大事」と発言した本人はどう答えた?
 

第2次岸田改造内閣が発足し、記者会見する岸田文雄首相=8月10日午後、首相官邸

 回答率を見ると、自民党は74・5%で、他党と比べて低調だった。岸田文雄首相(自民党総裁)は7月31日、公邸で記者団に対し「政治家の立場から、それぞれ丁寧に説明していくことが大事だ。国民の関心も高い」と述べていたが、自身は回答していない。
 共同通信が8月10、11日に実施した全国緊急電話世論調査では、自民党や党所属の議員が十分に説明していると思うかという質問に対し「説明が不足している」との回答が89・5%に達した。「(教団との)関係を絶つべきだ」とする回答は84・7%に上り、国民に強い不信感があることがうかがえる。
 回答率は次のようになった。

 関わり方は多種多様だった。最も多かったのがイベントへの出席で79人。祝電やビデオメッセージの送付が48人。選挙活動への支援協力やその申し出があった、と答えたのは30人余りだった。「教団関連という認識がなかった」という意見が見受けられたほか、「祝電は儀礼的、形式的なものだった」との記載もあった。

 ▽「一掃」どころか
 アンケートの集計や編集作業をしていた取材班に驚きや失望感が広がったのは、内閣改造が実施された8月10日のことだ。
 岸田首相は内閣改造で全閣僚に教団との関係を点検し、厳正に見直すよう指示していた。程度の差こそあれ、教団と何らかの接点がある閣僚は「一掃」されるだろう―。取材班はそう見通していた。現に、内閣改造前の時点で接点が分かっていた7閣僚は交代した。ところが、改造内閣ではそれを上回る8閣僚に接点があったことが判明したのだ。

第2次岸田改造内閣が発足し、記念写真に納まる岸田文雄首相(前列中央)と閣僚ら=8月10日、首相公邸

 さらに波紋が広がったのは、8月12日に決定された改造内閣の副大臣・政務官人事だ。計54人の副大臣・政務官のうち少なくとも23人に接点があったことが分かった。岸田首相は内閣改造で刷新を狙ったが、反社会的とされる教団との根深い関係が白日の下にさらされ、裏目に出た結果となった。
 世論は敏感だった。毎日新聞と社会調査研究センターが8月20、21日に実施した世論調査によると、岸田内閣の支持率は36%。7月16、17日の前回調査の52%から16ポイント下落した。昨年10月の内閣発足以降では最低となったという。共同通信が改造直後に実施した世論調査では54・1%と、前回調査から3・1ポイント増えたものの、与党が期待した政権浮揚効果は限定的だった。

 ▽報道されて関与認めるケースも
 アンケートでは、教団との接点を自ら明らかにし、自分の言葉で考え方を記す議員がいた一方で、アンケートで関わりを否定したものの、報道されたことでようやく関係が明るみに出るケースもあった。
 

首相官邸に入る萩生田光一氏=8月10日

 自民党の萩生田光一政調会長(衆院東京24区)は、経済産業相だった6月に旧統一教会の関連施設を生稲晃子氏と共に訪れていたことが分かった。生稲氏は7月の参院選に出馬、東京選挙区で当選しており、支援を要請したとみられる。2人の施設訪問は8月16日、週刊新潮がニュースサイトで報じた。
 萩生田氏は18日、記者団に対し、訪問を認めた上で、事前に教団の関連団体「世界平和女性連合」の会員が集まる場だと認識していたと明らかにした。
 萩生田氏はアンケートに対しては、2014年に会合であいさつしたなどと答えたが、6月の施設訪問は記載していなかった。生稲氏も集会などに出席したことはないと回答していたが、事務所は施設訪問を「事実」とするコメントを発表した。事務所によると、生稲氏の演説を聞いた関係者から「他にも仲間が集まっているので話を聞かせてほしい」と依頼され、スタッフの判断として訪れたという。
 萩生田氏は自民党政調会長として岸田政権の政策推進の中核を担う立場だ。教団側との関係について萩生田氏は「かつての社会的問題はないと認識していたが、いままだ苦しんでいる人がいることに思いが足りず反省している」と述べた。「活動は一線を画す」とも語った。

 ▽「政治家は想像力を働かせてほしい」
 宗教と政治の関係に詳しい上越教育大の塚田穂高准教授(宗教社会学)は、旧統一教会の特徴を踏まえた上で、政治家が接点を持つことに警鐘を鳴らす。
 「旧統一教会は宗教団体一般と横並びにして考えられない。長年にわたり霊感商法や強要的な高額献金などにより、大きな被害を出してきた。刑事も民事も他に例がないほどトラブルを積み重ねてきた」

  「どういう団体かは少し調べれば分かる。それをせずに『知らなかった』と言うのは怠慢。相手が反社会的な団体や特別な思惑で近づいているのかもしれないのに、何でも付き合うというのは政治家としての資質を欠く」

 接点を持っていた議員らに対しては、こう指摘した。「祝電や祝辞などのもたらす効果にまで想像力を働かせて、反省を示してほしい。教団にとっては自分たちの宗教理念はここまで認められている、政治家からお墨付きが得られたと感じ、活動を正当化させるだろう。一方、被害者らは、政治家と教団がつながっているならば自分たちが被害を訴えても通らないと絶望的な思いとなっただろう」

 【各議員の詳しい回答は以下のURLから】

  https://digital.kyodonews.jp/static/diet/questionnaire/list0.html

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