第7戦チェコを目前に控え、エフレン・ヤレーナがタイトル獲得。チームMRFタイヤも欧州選手権初戴冠

 2022年ERCヨーロッパ・ラリー選手権で今季序盤からシリーズを牽引してきたチームMRFタイヤのエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)と、そのコドライバーを務めるサラ・フェルナンデスだが、8月26~28日に開催される第7戦バウム・チェコ・ラリー・ズリンを目前に控え、今季のシリーズチャンピオン獲得が決定した。スタンディング上のライバルであったシモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)が、直前で今後のエントリーを取り消したことで、年間有効6戦の勝ち点差により、すべてのラウンドでフィニッシュした一貫性がヤレーナ/フェルナンデスの初戴冠を後押しする結果となった。

 前年度2021年には、現在WRC世界ラリー選手権のWRC2クラスをリードするアンドレアス・ミケルセンに次ぐランキング2位に終わっていたヤレーナにとっては、これが自身初のERCチャンピオン獲得となり、僚友のフェルナンデスは2年連続のコドライバーズ・チャンピオンシップのタイトルを獲得。

 ヤレーナは1980年のアントニオ・ザニーニ以来のスペイン出身ERCチャンピオンとなり、ラリーが始まる金曜日には、第7戦のヘッドクォーター(HQ)が置かれるズリンでプレゼンテーションを実施し、その功績が称えられるという。

 このオフ期間にチームMRFタイヤへの移籍を決めたヤレーナは、開幕戦でラジエーターにダメージを負い総合12位フィニッシュという厳しい船出を強いられると、波乱のスタートから一転。第2戦以降は安定した戦績を重ね、3月のアゾレス・ラリーでは最後のパワーステージで圧巻のパフォーマンスを披露。地元出身のスペシャリスト、盟主リカルド・モーラ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)を最後の最後で撃破し、印象的な初優勝を収めた。

 続くターマック戦のラリー・イソラス・カナリアスを総合2位で終えると、続く高速グラベル戦、ラリー・ポーランドでは堅実な走りで4位フィニッシュを果たし着実にポイントを加算。MRFのチームメイトを務めたマルティン・セスク(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)のホームであるラトビア・リエパヤではワン・ツー・フィニッシュを達成し、ERC史上初の全SS完全制覇を達成したセスクの技を吸収し、続くイタリアの首都ローマ戦での4位フィニッシュへとつなげていた。

 このFIA格式欧州選手権であるERCに、2020年から本格的な挑戦を開始したMRFにとっても、積極的な開発プログラムを始めて2年目の今季に、早くもその懸命な努力が報われたかたちとなり、インド発の企業としてヨーロッパの主要なラリー選手権でチャンピオンシップを獲得した最初のメーカーとなっている。

「本当に言葉がないよ。こういうかたちとはいえ、それは僕らの夢であり、今から4年前に僕らがラリーチーム・スペインのカラーでERCに参戦した初々しいクルーだった頃から思い描いていたことなんだ」と、笑顔を見せた新チャンピオンのヤレーナ。

これでエフレン・ヤレーナは1980年のアントニオ・ザニーニ以来のスペイン出身ERCチャンピオンに
ラリー・リエパヤでは、チームメイトを務めたマルティン・セスク(シュコダ・ファビアRally2 EVO)のホームで1-2フィニッシュを達成した

■「我々としても非常にうれしく、また重要な機会だった」とMRF副会長

「これまでERC3ジュニアのチャンピオンシップとERC3のタイトルを手にし、今では総合タイトルを獲得したんだ。これほどスゴイことはないよ! それに今季はMRFにとっても非常に重要な年だった」と続けるヤレーナ。

「僕らはベストを尽くしてタイヤの開発に全力を尽くしたし、ひとつの同じ方向に向けて本当に懸命に取り組んだと思う。エンジニア、チーム、そしてクルー全員が関与し、誰もが素晴らしい仕事を成し遂げたんだ」

 そのMRFで副会長兼マネージングディレクターを務めるアルン・マメンは、エースの言葉を受け「我々としても非常にうれしく、また重要な機会だった」と応じた。

「我々にとっても、この最初のヨーロッパ・ラリー・チャンピオンシップを獲得できたことは望外の喜びだ。これはトップレベルでパフォーマンスを発揮し、タイトルを獲得するタイヤを開発するため、チーム全体が費やした努力の証だからね。本場ヨーロッパのラリーで、我々の優れた技術力を示すことができたのだから!」と付け加えたマメン。

「この偉業を達成したエフレンとサラ、そしてこの歴史的な努力を達成するためチームをサポートしてくれた、他のゲスト参戦ドライバー全員を祝福したい。2022年ERCの栄冠を獲得することは、MRFにとって非常に権威があり、誇りに思う瞬間だ」

 ERCのシリーズマネージャーを務めるイアン・キャンベルも、この新しいチャンピオンを大いに称賛するコメントを残している。

「WRCプロモーターとFIA ERCを代表して、エフレンとサラが2022年のチャンピオンになったことをお祝いしたい。彼らは今季すべてのイベントで非常に優れたパフォーマンスを発揮してきたからね」と語ったキャンベル。

「さらにチームMRFタイヤがこの画期的な勝利で歴史を作ったことも祝福したい。その一方で、シモーネ・テンペスティーニのイベント参加を保証するため、我々もあらゆる機会を積極的に追求してきたことは明らかにしたい。ラリーとチャンピオンシップを完全にサポートするため、この努力を払ってきたんだ」と続けたキャンベル。

「しかし残念ながら、関係者全員の努力にもかかわらず、シモーネはスペインでの最終ラウンドに出場したいと考えていたが、ラリーを開始するようすべての関係者を説得することができなかったんだ」

 その言葉どおり今季のERCは残り2戦となり、今週末となる8月26~28日にはチェコ共和国を舞台とした第7戦バウム・チェコ・ラリー・ズリンが、続く最終戦は直近に決定したばかりのターマック戦、言わずと知れたWRC世界ラリー選手権の名物ラウンド『ラリーRACCカタルーニャ-コスタ・ドラダ』がスペイン、カタルーニャ地方で争われる。

「エンジニア、チーム、そしてクルー全員が関与し、誰もが素晴らしい仕事を成し遂げたんだ」とヤレーナ
ラリーが始まる金曜日には第7戦のヘッドクォーター(HQ)が置かれるズリンでプレゼンテーションを実施し、その功績が称えられるという

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