医療現場は“賛成”も保健所は“不安残る” 新型コロナ感染者“全数把握”見直しで及ぼす影響は?

<瀬崎一燿キャスター>

「岸田総理が8月25日に見直すと発表した『全数把握』とは、コロナ患者の全患者の氏名、年齢、住所などを把握することで、医師がそれらすべての情報を記載した『発生届』を提出することで成り立っています」

「見直しが検討されているのは、この『発生届』の対象を高齢者などの重症化リスクの高い患者に限定することです。『全数把握』を続けるか、対象を限定するかは、県知事が判断します。医療機関や保健所の負担軽減を目的とした見直しの検討ですが、医療現場はどう捉えているのでしょうか」

静岡市葵区で発熱外来を受け付けるかげやま医院です。

<かげやま医院 影山慎二院長>

「8月入ってから毎日報告書書いてましたよ。たくさんたまりました。こんなにあります」

Q.これすべて陽性?

「陽性。だって届け出ですから」

こちらが陽性者が確認されるたびに医師が作成している「発生届」です。「全数把握」の見直しによって届け出る感染者の対象が高齢者や重症化リスクの高い人に限定されることについて、影山院長は。

<かげやま医院 影山慎二院長>

「重症になりそうなリスクのある人に手厚い医療をすることがすごく大事なことだと思います。無症状の人をコロナとひとくくりにして同じように扱うのは前からいかがなものかと私は考えていたので賛成したいと思います」

手続きが簡素化されることは、前向きに受け止めますが、それだけでは問題は解決しないと指摘します。

<かげやま医院 影山慎二院長>

「やっぱり治療薬がないといけないのかなと思います。仕事が(継続)できる、あるいは周りの人との接触が妨げられないような薬ができるというのが本当は大事なことなのかなと思っています」

医療機関からの「発生届」を受け取り、システムに入力する作業を請け負っている保健所です。

<保健所の職員>

「1件あたり3~4分くらいは時間がかかってしまうので、総量が多ければそれなりに時間がかかってしまうような作業」

「全数把握」がなくなれば、職員の負担軽減につながりますが、不安も残るといいます。

<静岡市保健所 田中一成所長>

「感染力を持った人があちらこちらに移動しないようにきちんと自宅や病院で対応して頂くことをお願いするために(全数)把握している。必ずしも重症化する人を届けてもらえればいいというわけではないと考えています」

「全数把握」がなくなることで、軽症だった人の症状が悪化した場合の入院調整や療養証明書の発行に時間がかかるなどの懸念もあります。

全数把握を続けるか判断する立場の川勝平太知事はこれまでに、「保健所や医療機関事務負担の軽減につながれば良いと思う」とコメントしています。

<水野涼子キャスター>

「見直しが行われた場合、きょうも発表している静岡県内の新規感染者数がどうなるんでしょうか?」

<瀬崎キャスター>

「こちらのマップにまとめている新規感染者数はそのまま集計されることになりそうです。『発生届』の見直しが行われたとしても、患者の年代別の人数だけは引き続き報告を求めることになりそうです」

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