<金口木舌>越来グスクの面影

 越来グスクを知る人は少ない。首里城や勝連城などと違い、立派な城壁が残ったり復元されたりもしていないので無理もない

▼現沖縄市にあった越来グスクは、後に琉球国王となった尚泰久や尚宣威が王子時代に居城とした。だが沖縄戦の砲撃などで破壊され、1945年には米軍主導の開発で積み石が運び出され、急速に面影を失った。現在は地域の人が建て直した拝所がひっそりたたずみ、祈りの場に

▼その越来グスクが2019年に国指定名勝「アマミクヌムイ」に追加指定されたことを機に、市は本年度にも周辺を整備する計画を作る▼沖縄市といえば戦後の「コザ文化」が目立つが、戦前の「越来村文化」も脈々とそこにあった。その掘り起こしは故郷の歴史に厚みを持たせ、地域の誇りにもつながるはず。ちょうど復帰50年の節目だ

▼ところで越来グスクの在りし日の姿は、県公文書館職員が00年に米国の博物館で収集した米軍撮影の上空写真だけが確認され、近距離から撮影したものは見付かっていないそう。どこかに眠ってませんか。

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