「説く力」でマジック復活? 岸田首相、臨時国会どう裁く 総裁選出馬表明から1年

岸田文雄首相(資料写真)

 26日は岸田文雄首相が自民党総裁選への出馬を表明して1年となる。「聞く力」を前面に総理総裁に就き衆参両院選挙を勝ち抜いたが、今や「コロナ」「旧統一教会」「国葬」「物価高騰」の四重苦に直面。内閣支持率も低下して「説く力」(自民党の閣僚経験者)も問われる中、首相が臨時国会の早期の召集に応じ、論戦を受けて立つかに注目が集まってきた。

 自らも感染した新型コロナウイルス感染症を巡っては24日、全国での全数把握の見直しを表明。「手法や判断を委ねる」とされた自治体側からは「具体策を示さずに丸投げされても困る」と戸惑いが広がる。

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題では同日、自身の支援者が関係したとの週刊誌報道に対し「私は関係を承知していなかった」などと否定。国会内からは「(総裁選の)出馬会見で掲げた岸田ノートをしっかり見返して説明すべきだ」(野党幹部)と批判交じりの皮肉も聞かれる。

 安倍晋三元首相の国葬(9月27日)については閉会中審査が予定されているが、こちらも「総理の出席を求める」(立憲民主党の泉健太代表)といった圧力が強まってきた。物価対策に至っては連立与党の公明党も閉会中審査を促し始めている状態だ。

 立民など野党は憲法53条に基づき臨時国会の早期召集を求めているが、政府側は「国会のことでもあり、与党ともよく相談して対応したい」(松野博一官房長官)と説明。国葬前の召集については「審議すべき事項なども勘案し必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定すべきものと考える」(同)と「禅問答のような見解」(野党議員)を示すにとどまる。

 こうした中、召集時期を国葬後に先送りするムード一辺倒だった与党内から前倒しの「主戦論」(自民党国会対策関係者)が浮上。「このままでは内閣支持率は下がる一方」(同党中堅)との危機感を受けて「岸田マジック再び」(同)との逆転待望論が背景だ。

 もともと自民党内には岸田首相がコロナ感染拡大下でも高支持率を維持した背景を「安倍元首相や菅義偉前首相(衆院神奈川2区)と違い丁寧な語り口で通したからだ」(同党閣僚経験者)と見る向きがあるという。「『聞く力』に続き『説く力』で難局突破を」(同)との期待が広がれば一転、臨時国会の召集時期は早まる可能性もありそうだ。

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