オンライン協働学習「COIL」の先駆者関西大学が拓く 国際教育と学生自身の可能性

オンラインを活用した国際教育とCOIL型教育の可能性

「日本にいながら、海外の学生との交流や学びを得られるのがCOILの特徴です。導入大学が増えることで、単なる留学の代わりに留まらないCOIL型教育の可能性はさらに拡大すると期待しています」

そう語るのは、関西大学グローバル教育イノベーション推進機構(IIGE)で機構長を務める藤田髙夫副学長だ。COIL(Collaborative Online Internat ional Learning)」とは、2か国以上の大学をオンラインで結び、学生たちがディスカッションや共通の課題にチームで取り組むという、国際的で双方向的な学習法を指す。

関西大学は、2014年にCOILをいち早く導入。2018年にはIIGEを事務局にJPNーCOIL協議会を設立し、日本の大学へのCOIL型教育の普及や大学間交流を推進する窓口として活動してきた。近年のコロナ禍で現地留学が難しくなったこともあり、COILを導入する大学はこの2年で49大学に増加している(2022年4月現在)。各大学のニーズや課題を汲み取りながら、今後も日本における国際教育の新たな形を提言していくという。

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日本語以外で異文化と接する日々の授業が学びを深める

関西大学ではCOIL型教育をどう活用しているのだろうか。IIGE副機構長の池田佳子教授に、具体的な授業内容を伺った。

「新たにCOIL用の科目を作るのではなく、既存科目をCOIL化する形にしています。学生からすれば『希望科目を履修したらCOIL型だった』という印象だと思いますね。一方で春や夏の長期休暇には、留学に代わる体験となる特別なCOIL型プログラムを展開しています」

その活用は、全学の共通科目から各学部の専門科目や演習に至るまで多岐にわたる。例えば、 海外の大学との知見を交換し、より精度の高い研究成果を得たい、との目的で導入する理工系ゼミもある。つまり、異文化交流やコミュニケーション能力の向上といった段階を超え、学びの深まりや活動の広がりを生む効果や特性があるという認識がすでにされつつあるのだ。

こうした背景を受け、関西大学は、文部科学省の主催事業「大学の国際化促進フォーラム」のプロジェクトとして、多国間を結ぶ多方向型の「J - MCP(Japan-Multilateral COIL/VE Project)」にも取り組む。大学同士を1対1で結ぶ双方向型のCOILからさらに進んだ手法だ。 「この2年で世界全体のオンライン学習環境が整備されました。それならということで始まったのが、多国間で繋がってみんなで学ぼうというJ - MCPです。それぞれによさがあるので、学びの目的や特性に応じて双方向型・多方向型を学生が選択できる仕組みができています」(池田教授)

COIL型の授業では、日本国内にいるだけでは想像しえない体験をすることもある。そのため、学生たちはさまざまな意見のぶつかりや摩擦、文化的背景の違いなどに驚き、悩むこともあるという。

「ですが、最初はコミュニケーション力に自信がなかった学生が、COIL型授業によってハードルを越えていく姿を見る機会も多いのです。日本語以外で異文化と接する環境が日常にあること。それがCOILの価値だと思っています」

藤田副学長は、壁を乗り越えた時に国際人として大きな一歩を踏み出すことができる、と語る。関西大学の4年間には、COIL型教育を始め、海外との接点をもち成長する多彩な機会が用意されている。

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