【寄稿】スマート遊技機(WEB版)/POKKA吉田

7月は10日に参議院議員選挙の投開票があったわけで、私としてもそこまではずっと頭の中は選挙のことばかりだったが、その後は頭の中を急にスマート遊技機にシフトさせている。ご存じの方が多いとは思うが、19日にスマート遊技機フォーラムがあったからだ。

この19日のスマート遊技機フォーラムは、その目的としては日工組、日電協が全国のホール関係者にスマート遊技機の、まだあまり知られていない内容も含めてその時点で公表できる内容をできるだけ発信しようというものだったと思う。私もパネルディスカッションのコーディネーターとして登壇しているが、そういう姿勢で努めたつもりだ。

フォーラムの特徴としては、まず新しい情報はスマートパチンコにあった。MLTSの規制が既存機P機の320から350になるという点とc時短の緩和がアナウンスされている。c時短の内容については詳細を聴くとおそらくホール関係者のほとんどが意味がわからなくなる代物だと思うが、あのようにパチスロのチャンスゾーンのような性能も搭載できるよ、というざっくりしたアナウンスに終始したことで、「既存機P機でも十分な性能だが、スマートパチンコはさらに上を行くのはわかった」くらいには伝わったかと思う。

新情報としてはスマートパチンコのみであったが、タイミングとしてはパチスロが盛り上がった時期でもあった。7月から導入された6.5号機、特に犬夜叉が7月はパチスロ市場を牽引しており、一時期は中古相場で200万円ほどの値段をつけるほどに需要が集中したようだ。ちょうど犬夜叉の営業データが非導入店も含めて全国のホール関係者に共有されているタイミングでのフォーラムであった。昨年の時点でスマートパチスロの性能規制において有利区間ゲーム数上限規制の撤廃はアナウンスされているから、4,000ゲーム制限の6.5号機でもこれだけの業績が出るのだからスマートパチスロはもっと上ということも説明するまでもなくホール関係者には伝わる。

結果的にフォーラムにおいてスマート遊技機へのホール関係者の期待は急激に高まることとなった。

あとはスマート遊技機専用ユニットの供給も含めて、世界的な半導体や金属原材料不足による調達コスト暴騰の影響を鑑みて、どういうペースでスマート遊技機が普及していくか、じっくり注目していたいと思う。

それにしても今年の11月に登場予定となっているスマートパチスロ、来年の3月に登場予定のスマートパチンコ。これは後の数十年後のぱちんこ業界にとっては、間違いなく振り返ると特大のエポックメイキングと評されるものだろうと思う。

玉は封入され遊技客が触ることはない。現在普及している各台計数機もあって、違和感なく遊技客は遊技できそうではあるが、各台計数機の場合は玉に触れる機会は意外に多い。むしろ各台計数機は店舗スタッフの重労働が軽減されるというメリットに私としては評価が行く。

さらにはメダルは存在そのものがなくなる。メダルがない以上、ホッパーやセレクタ等のメダルに依拠するメカが一切不要となる。パチスロにおいてはメダルを使わないということは歴史上はじめてのことだ。

ぱちんこは玉があるとはいえ、一台の機械単体の中で循環するいわばスタンドアローン型。パチスロはメダルそのものがない。必然的にスマート遊技機を設置することが可能な島条件は簡素化され、既存機の島における補給や洗浄といったオートメーション化してきたモノのほとんどが不要となる。新店出店時におけるスマート遊技機導入コストは、どう考えても軽くなる計算だ。玉もメダルも買わなくていいし、島は電源等の必要最低限さえ確保できていれば、あとは遊技機を固定することのみが求められる役割となる。

フォーラムを境に全国のホール関係者のスマート遊技機についての評価がガラッと変化したというのが私の現場感だ。フォーラム前はスマート遊技機について様子見のホール法人がかなり多かった。が、フォーラムにおいてスマート遊技機の既存機に対する性能アドバンテージが高いことがある程度はっきりしたことで、それまで消極的だったホール法人の多くは様子見から可能なら先行導入へ、と明確に変節している。

良し悪しで言えば、既存機にも6.5号機にも、そしてスマート遊技機にも、性能規制に不安がないとしても必ず発生するものである。良い機械は良いし、性能規制に不安がなくとも動かない機械は全然動かない。それは当たり前のことである。だが、近年、この数年だけを振り返っても、良いと評価された機械は中古相場でえげつない値段をつけることが珍しくなくなっていった。まだVQnetが中古相場のプライスリーダー的存在だったとき、5号機のアイムジャグラーEX登場までは売買物件の入力制限が999,999円だったことを知る人は減っているかと思う。VQnetはアイムジャグラーEXの中古物件の引き合いが強すぎたことを懸念して入力制限を撤廃し、そこから中古価格100万円以上の物件が登場するようになった。今は最高値で400万円を超えることもあったくらいだから、犬夜叉が200万円前後になったとて、まだ最高値ではない。そもそもパチスロでは中古相場のトップランクにジャグ系が君臨している。

今後はユニット業者のスマート遊技機専用ユニットの供給総数やペースにもよるが、徐々にスマート遊技機が普及していくことになる。もちろん、既存機についてもP機や6.5号機は既に性能規制面でなんども緩和を勝ち取ってきた手前、スマート遊技機が仮になくとも業績に寄与するだけの公算はある。そこに、全く新しい誰も見たことがないカテゴリである次世代の遊技機、スマート遊技機が登場するわけだ。

私としては、業界におけるスマート遊技機に対する評価が急上昇したきっかけとなったフォーラムに登壇者としてかかわったこと、並びに今年から来年にかけてこの新しいカテゴリ、業界にとってのエポックメイキングの瞬間に立ち会えるということは嬉しく思っている。もちろん、供給面の不安はあるが、これは業界に起因する問題ではない。業界関係者は自社ならびに自社が属する職域の最善を尽くすように努力し、あとは徐々に普及していくのを待てばいい。その結果、各社の業績が向上すれば、誰もがポジティブになれるはずだ。

参議院議員選挙では残念だったが、その翌週にはこういったポジティブな話が浮上する。これこそ業界の底力だとあらためて思った次第である。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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