保護に限界…「地域猫活動」知って 大村純忠まちねこ隊

発泡スチロールの箱に詰め込まれて捨てられた2匹の子猫(山石代表理事提供、画像は一部加工しています)

 「馬場先波止にネコが捨てられている」-。6月初旬、長崎県大村市内で地域猫活動に取り組む「大村純忠まちねこ隊」代表理事の山石みほ子さんに、こんな連絡が入った。杭出津1丁目の現場に到着すると、片手サイズの発泡スチロールの箱が人目に付きにくい茂みの中に置かれていた。穴が複数開けられたふたを開けると、生後間もないと見られる子猫2匹が詰め込まれていた。「またか」-。衰弱が激しく弱々しく鳴き声を上げる様子に、ため息が漏れた。

 2017年に発足の同隊にはこうした捨て猫の連絡が年間10件以上寄せられる。ただ、同隊では既に25匹を保護。世話するスタッフの数は十分ではなく、多くを隊の自腹で負担している餌や病院代を考えると保護するにも限界がある。「『ボランティアがどうにかしてくれるだろう』と軽い気持ちで連絡してくるのだろうけど…」。山石さんは困惑気味に話す。
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 市内ではこうした野良猫が地域トラブルの原因となる例も多い。
 市内の40代男性は、同じマンションの住人が餌やりをしている野良猫の被害に2年ほど前から悩まされている。敷地内には7~8匹の野良猫が住み着き「買ったばかりの新車に爪で傷を付けられ、一時はふん尿のにおいもすごかった」と話す。
 男性は別の住人らと一緒に餌やりに抗議。状況は少し改善されたというが、「車の被害は泣き寝入り。人が安易に餌やりすることで嫌われてしまったネコには何の罪もないんだけど」と複雑な思いを語る。
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 大村市では野良猫による被害や殺処分数を減らそうと、2017年度から不妊・去勢手術費用を助成する事業を実施している。例年、申請数が多くキャンセル待ちとなることもあったため、本年度から予算を100万円から150万円に増額。6月から受け付けを始め、8月19日までに約70件の申請があった。
 昨年度からは市本庁舎や出張所窓口に「おおむらわんにゃん募金箱」を設置。今年3月までに3万円超の浄財が集まり、同事業に充当された。
 一方で「不妊・去勢手術だけでは野良猫の繁殖力に追いつかず、問題の根本的な解決にはならない」と山石さん。野良猫を地域で見守り、管理する地域猫活動の必要性を強調する。
 同隊では年間100匹ほどの野良猫を手術につなげている。地域猫活動ではこうしたネコへの餌やりやトイレの場所、掃除の方法などを住民とルールを決めた上で地域で管理。そうすることで、新たな野良猫の発見や被害の軽減などにつながるという。
 山石さんの下には自治会や公的施設から相談が寄せられるなど、市内でも徐々に広がりを見せている。ただ「地域全体で理解を得るには至っておらず、長崎市と比べると浸透していないと感じている。行政には説明会の開催や広報活動などにも積極的に取り組んでほしい」と求める。

6月に保護した2匹の子猫を抱く山石代表理事。譲渡会で新たな飼い主を探している=大村市内

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 6月に保護した2匹の子猫は、県動物管理所に送っても殺処分されることが分かったため、同隊で引き取った。現在は健康状態も良好で元気に遊び回っており、主催する譲渡会で新たな飼い主を探している。
 一方で保護してもすぐに死んでしまう子猫も多い。山石さんは「飼い主のモラルはもちろんだが、捨て猫や野良猫に対して市民にもっと関心や知識を持ってほしい。不幸なネコを減らすには地域猫活動しかなく、私たちもできる限りサポートしていきたい」と話した。


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