東京市場とニューヨーク市場の違いは?現役ディーラーがマーケット毎の特徴を解説

24時間マーケットが動いている外国為替市場ですが、時間帯によって取引可能な市場が変わり、特徴もそれぞれの市場で異なります。

そこで、為替ディーラー・井口 喜雄( @yoshi_igu )氏の著書『1日で数百億を動かす現役ディーラーが教える 勝者のトレード』(KADOKAWA)より、一部を抜粋・編集して市場ごとの特徴を解説します。


東京市場のメインは仲値の攻防(8時~12時)

ウェリントン市場をこなすと、次に東京市場へ移ってきます。東京市場は日経平均や本邦実需勢(企業の実需取引)を意識した取引をしていきますが、メインになるのは東京市場の仲値が決まる日本時間の午前9時55分にかけてです。

仲値とは金融機関が外国為替取引をする際の基準レートのことで、刻一刻と動く為替レートをどこかのタイミングで基準レートを決めてしまおうという制度です。銀行の外貨預金などの為替レートには、この仲値が利用されます。

仲値が決まる時間は9時55分ですから、この時間がポイントとなります。

9時55分に向けて銀行が仲値の価格を吊り上げてくる

企業からは9時55分付近の値段で決済したいというオーダーが集まってきますが、輸入企業(ドル買い)のほうが多くなる傾向があります。そうなるとドル買いがわかっている銀行は、より高いレートで顧客に売りたいという思惑になり、9時55分までにできるだけ仲値の価格を吊り上げる行動に出ます。

そのため9時くらいから9時55分まではドルが上がりやすい傾向にあるのです。特に企業の資金決済が多くなるゴトー日(5日、10日、15日、20日、25日、30日のように5と10の付く日)は取引が活発に行われます。

そして仲値後はどうなるでしょうか。思惑によって吊り上げられたのであれば、ドルは元の位置に戻る動きをする確率が高まります。

<東京市場のポイント>
・9時55分まではドルが買われやすくなる
・9時55分以降はドルが売られやすくなる

当然、シナリオ通りに行かない日もありますし、あまり固執しすぎると大きくやられます。ただ、仲値が決まる前にドル円は買われやすく、仲値が決まったあとはドル円が売られやすいといった基本は押さえておくべきでしょう。

以上は、実需が中心の東京市場だからこそ使える考え方です。中長期のトレードスタイルであれば仲値の動きは、実勢とは関係のないただのノイズでしかありませんが、参加者の思惑を直に受ける短期売買であれば無視してはならないポイントです。

東京の午後はレンジタイム。アーリーロンドンまで(12時~15時)

東京の株式市場が後場に入ると、為替取引は落ち着きを見せ、値動きが小さくなります。無理に取引をしなくてもいい時間帯かもしれません。

レンジを抜けずに終わるパターンが多いため、あえて取引するのであればサポートとレジスタンスを決めて、小さな利益を丁寧に拾っていくスタイルが賢い方法と言えます。かなりの確率でレンジとなる試算が出ており、この時間帯での有効な取引方法となるので覚えておきましょう。

ただし、レンジで取引できるのはロンドン市場が始まる前までです。東京市場が終わる16時ごろになると、東京からロンドンにマーケットの舞台が移ります。「アーリーロンドン」と言われるロンドンのプレイヤーが参加してくると、東京市場とはまったく違う景色になります。

ロンドン市場はトレンドフォロー。大きなフローについていく(16時~18時)

外国為替取引は24時間取引が可能ですが、その中でも強いトレンドが発生しやすいのが東京市場からロンドン市場に移るこの時間帯です。

ロンドン市場のプレイヤーは東京市場の値動きを否定することも多く、東京市場で上昇していたのであれば、売りを仕掛けてロングポジションを崩してくることもあります。

理由はシンプルです。逆方向に持っていくことで東京市場で作られたポジションのロスカットが狙えるからです。

東京市場のトレンドをさらに伸ばしたほうが儲かると彼らが考えるのであれば、トレンドは継続していきます。

この時間帯からは圧倒的な取引量を武器に、一気にトレンドを自分たちの行きたい方向に作っていきます。ロンドンのディーラーは〝マーケットを作っているのは俺たちだ〞というプライドがあるのです。

この特徴のある時間帯の攻略方法は、“ロンドン勢に逆らわない”ことです。彼らがどちらに行きたいかを先回りすることで、大きな収益を狙いに行けますが、失敗すると大ケガもします。

安全に行くのであれば、彼らが作るトレンドについて行くのがベターです。状況によりますが、彼らが本気でトレンドを作りに行くときは、動いてからついて行っても十分に間に合う値動きが期待できます。

ダイナミックな値動きになるニューヨーク市場(21時~24時)

21時になるとニューヨーク市場に突入していきます。この時間帯は世界的にも影響力の高い経済指標が発表されるほか、世界一の規模を誇るNYダウ、債券、商品、金利がさまざまな要因でダイナミックな値動きをします。

ボラティリティが高く、材料も豊富なため、何を見て取引をすればよいのかわからなくなることもあるかと思います。ほかの市場と比較すると難易度が少し上がると考えておいたほうがいいでしょう。

たとえば、アメリカの経済指標には、ほかの国の経済指標にはない“やっかいさ”があります。

アメリカの経済指標は、世界の経済指標と言ってもいいほどの影響があります。言い換えれば、アメリカがどうなるかで世界が変わってしまう、世界が動いてしまう可能性があるので、アメリカの経済指標は重要となるのです。

大事なのは、まず、その日にどんな経済指標が発表されるかを把握しておくことです。アメリカのGDP(国内総生産)や雇用統計、消費者物価指数、小売売上高など、重要な経済指標の発表があることがわかっていれば、「その時間帯は手を出さない」と、決めることもできます。

著者:井口喜雄

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