雷エリア正確予測へJAXAが福井空港に気象レーダー設置 国内で被雷最多の小松空港も観測範囲

旧管制塔の屋上に設置されたJAXAの気象レーダー=8月25日午後7時5分ごろ、福井県坂井市の福井空港
JAXAの気象レーダー

 雷が発生しやすいエリアを正確に予測し、航空機の運航などに役立てる研究に向け、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月25日、雲の中の状態が観測できる高精度な気象レーダーを福井県坂井市の福井空港に設置した。観測範囲は半径80キロで、国内の空港で1便当たりの被雷が最も多いとされる小松空港(石川県小松市)も入る。9月下旬に観測を開始する。

 航空機は飛行中に被雷しても安全に飛べるよう設計されているが、機体の損傷や欠航・遅延につながる。JAXAによると、国内の航空機の被雷は年間数百件、被害額は数億円に上る。

 福井空港に設置したのは、雲の中の粒子の種類を高精度に検知できる「Xバンド(X帯)二重偏波レーダー」。雷は、雲の中であられと小さな氷の粒「氷晶」がぶつかり、摩擦で静電気を帯びて発生するとされる。X帯レーダーで、あられや氷晶の多いエリアを判別し、雷の危険性を推測する。運用は最大5年間。

 設置工事は22日に始まり、25日は午後6時から、高さ約2メートル、重さ約500キロのレーダーをクレーンでつり上げ、旧管制塔の屋上に設置した。近くに避雷針も立てた。9月下旬まで電波発射を伴う調整を行う。

 JAXAは雷を避ける飛行ルートや離着陸のタイミングの設定につなげようと、2018年から「被雷危険性予測技術」の研究を本格的に行っている。

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 JAXA航空安全イノベーションハブの吉川栄一・主任研究開発員(40)は「冬の日本海側、特に北陸地方で発生する『冬季雷(とうきらい)』は世界的にも珍しいので、多様な雷のデータを収集できる。予測技術を高度化し、航空機運航の改善に貢献したい」と話した。

 JAXAは20年に福井県と航空科学技術に関する包括協定を締結。21年冬から福井空港で積雪観測の実証実験を行っている。

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