博多のラーメン文化は「豚骨」だけじゃない。魚介スープの非豚骨系ラーメン店3選

福岡といえば豚骨、豚骨と言えば福岡と、必要十分条件のような知名度となっている「豚骨ラーメン」。しかし最近、福岡では「非豚骨系」なるジャンルがにぎわっている様子。現役の福岡民放局のプロデューサーが、こっそり収集してきた情報を紹介してくれる「福岡民放局プロデューサーがこっそり教える、福岡非豚骨系ラーメン探訪」大好評につき第二弾が到着しました!

「非豚骨」という単語を博多で耳にすることが増えました。ラーメンといえば豚骨スープが当たり前の福岡で、新規出店は「非豚骨」がトレンド。それぞれ個性を生かした味で老舗の豚骨とは一線を画して勝負を挑んでいます。

そんな非豚骨系に焦点を当てたシリーズ「福岡民放局プロデューサーがこっそり教える、福岡非豚骨系ラーメン探訪」、第2弾は「魚介スープのラーメン店」3店舗を選んでみました。

【らぁ麺 なお人】 高級のどぐろラーメンでコロナ禍を跳ねのけ人気店に

長年、東京のラーメン店で修行してきた松崎直人さんが、満を持して住み慣れた渡辺通の路地裏に開いた「らぁ麺 なお人」。日本が新型コロナに見舞われる直前の2020年1月にオープンしながら、連日行列ができた話題の店です。

店の扉を開けると、鼻をくすぐるのは店内に充満している魚の匂い。豚骨が圧倒的多数派を占める博多の街にあって「ラーメン屋さんでこの匂い?」というギャップはいきなり強烈なジャブを食らった感じです。期間限定のものも合わせて数種類あるメニューの中で、この店を一躍有名にした「高級のどぐろらぁ麺」で使う、のどぐろの煮干しが放っているものです。

カウンターに腰かけ、しばし店主の動きを観察。スープは一杯分ずつ雪平鍋に掬って加熱。麺を茹でる釜のそばで、ラーメン鉢を温める。ラーメン鉢にタレを注ぐ。雪平鍋からスープを淹れる。茹で上がった麺を湯切りしてスープに流し込み、箸で整える。その上にチャーシューやメンマを見映え良く盛り付ける。とにかく、所作の一つ一つが優雅なのです。思わず見とれてしまいます。

運ばれてきた「高級のどぐろらぁ麺」。スープからのぼりたつ香りの強さは、さすがのどぐろ。しかし、レンゲに掬って口に含むと、やさしい醤油ベースの液体が喉を通り抜けていきます。つるりとした麺、しっとりとしたチャーシュー、茹で加減が絶妙な煮卵、そして甘さ引き立つ玉ねぎ。大きく鼻で息をして、香りを何度も楽しみたくなります。

店主の松崎さん、究極の一杯を作るためにスープや具材を丹精込めて仕込み、麺もスープに合わせて製麺所にオーダーしているというこだわりよう。今年9月下旬には、キャナルシティ博多近くに建設中のビルに2号店をオープンさせる予定。店名はなんと「非豚骨 なお人」。非豚骨といえばここ、と言わしめる覚悟と決意を込めたのだとか。1号店とは全く違うメニューを提供するとのことで、こちらも楽しみです。

■TEL:092-401-1540
■住:福岡市中央区渡辺通5-10-28[MAP]
■営: 12:00〜15:30/17:30〜20:00
■休:水曜日
■店舗詳細はこちら

>>続いては【らぁ麺稲田】 焼あごベースの文字通り後光が差すスープ

【らぁ麺稲田】 焼あごベースの文字通り後光が差すスープ

2022年1月3日にオープンした美野島の「らぁ麺稲田」。平日は夜のみの営業、土日はランチ営業です。陶板の看板が高級感があっておしゃれですね。

麺のメニューは「後光醤油らぁ麺」と「後光醤油ポークらぁ麺」のみ。
後光という単語から、なにやら眩いばかりのスープを想像しますが、果たして…。

なるほど、後光が差している!醤油ラーメンといってもスープは褐色というよりも黄金色。まさに「後光」の名にふさわしい。

出汁に使われているのは焼あご。九州以外の人にはなじみのない食材の一つかもしれません。私も県外から福岡に来た身で「雑煮の出汁は焼あごでとるとよ」と教えてもらいました。あごとは、トビウオのことで運動量が多いことから脂身が少なくあっさりとした出汁が取れるとされています。

そのスープに沈められているのは全粒粉の自家製麺。「後光醤油ポークらぁ麺」は麺を覆い尽くすように低温調理の煮豚、煮卵、紫玉ねぎと柚子皮、メンマ、三つ葉が載っています。ほとんど和食です。途中、卓上の黒胡椒で味変したのに、やさしい感じは最後まで続き、スープ完飲しました。

サイドメニューの煮豚と煮卵を載せた「ポーク飯」もいただきました。「後光醤油ポークらぁ麺」と同じ煮豚と煮卵が載っていて、結果欲張りさんみたいになってしまいました。ポークらぁ麺をオーダーした人は、白ご飯の方を追加して、メニューに書いてあるとおり「らぁ麺の煮卵、煮豚を載せ(卓上の)肉マニアソースをかけ、締めにスープを注いで」食べるのがいいと思います。

ちなみに、器は伊万里焼。ひとつひとつ絵柄が違っていてとってもかわいいです。

■TEL:092-980-4172
■住:福岡市博多区美野島2-26-27[MAP]
■営: 平日18時〜21時頃(未定)土日11時〜15時頃(未定)
※自家製麺が無くなり次第終了
■休:月曜日・火曜日(不定休あり)

>>続いては【中華そば かなで〜煮干編〜】 「万人受けはしません!!」な、どろ煮干しZERO

【中華そば かなで〜煮干編〜】 「万人受けはしません!!」な、どろ煮干しZERO

今回「魚介スープ」をテーマに食べ歩いていて最後に出逢ってしまった「運命の一杯」ともいえるのが、福岡市東区多の津に今年3月オープンした「中華そば かなで〜煮干編〜」で土・日限定メニューとなっている、どろ煮干しZERO。

入り口の自販機にはこんな説明が…
・「ZERO」とは調味料を全く使わないという意味です。
・塩分は煮干し等乾物由来のみ
・万人受けはしません!!
どれも魅力的なフレーズ。とくに「万人受けはしません!!」に惹かれ、1000円札を投入して食券購入。券面には「どろ」と書かれていました。

ラーメンを待っている間、水を飲もうとマスクを外すと鼻腔をくすぐるのは店内に立ち込める煮干しの香り。なんだか落ち着きます。卓上には濃縮プーアル茶があって、水と割って飲む仕組み。食後に飲むと脂分をすっきり流してくれるだけでなく、脂肪分の吸収を抑えたり、分解を促進したりという効能もあるようです。

さて、運ばれてきました「どろ煮干しZERO」。先ほどにも増して煮干しの香り、さらに岩のりのふわっとした磯の香りが食欲をそそります。

レンゲでスープを掬うと、まさにどろっとした粗漉しした感じ。いかにも濃そうな感じがします。ところが、口に含んでみるとこれが驚くほど穏やか。そうです、
・塩分は煮干し等乾物由来のみ
と書いてあった通り、刺激的なしょっぱさも醤油の甘さ辛さもありません。

綺麗に盛り付けられた中太ストレート麺がほどよくスープを纏います。ときどき一緒についてくる刻み玉ねぎや、柚皮の風味もいいですね。

もうひとつ、特徴的なのがこの分厚いチャーシュー。長崎・卓袱料理で知られる、角煮まんの具で使う肉のような、ずっしりとしていて柔らかくトロトロの豚バラ肉は、箸で持ち上げていると今にも崩れそう。フランス料理の「ポー・サレ」(塩漬けした後で煮込む)手法を応用したものだそうです。肉から出る塩味が、塩分が少ないスープとうまく調和していました。

レギュラーメニューは「淡麗煮干そば」「麻辣坦々麺」「煮干まぜそば」。ほかに夏ならではの冷製メニューもあるそうで、詳しくはお店のインスタグラム(※)をご覧ください。

■TEL:092-402-2872
■住:福岡市東区多の津4-8-7 サークレイトビル2F[MAP]
■営: 11:00〜16:00・17:00〜21:30
■休:火曜日

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