クマゼミが7割―。岡山市のNPO法人が街中の公園で10年かけて子どもたちと集めたセミの抜け殻を種類別に調べたところ、こんな結果が出た。指導に当たった環境学習センター・アスエコ(同市)の山田哲弘所長は「温暖化によって土が硬くなり、クマゼミが体の大きさや土に潜る力で優勢かもしれない」と推測する。
調査は2012年から21年まで年1回、岡山市子どもセンター(同市北区久米)が実施した。幼児や小学生らが7月下旬の午前中、こどもの森(同学南町)内の同じルート(約600メートル)を歩きながら、木にくっついていたり、地面に落ちたりしていた抜け殻を約1時間かけて探した。
毎年132~474個を集め、総数は3039個。大きさや触角の特徴で、クマゼミ▽アブラゼミ▽ニイニイゼミ▽ツクツクボウシの4種に分けた結果、クマゼミは2194個と72.2%を占めた。次いでアブラゼミ21.8%、ニイニイゼミ5.7%、ツクツクボウシ0.3%―の順で多かった。
年によって割合に多少のばらつきはあるものの、この10年はほぼ同じ傾向で、クマゼミは62.0~85.3%と断然トップだった。
同法人はこれらの記録をまとめたリーフレットを作製。採集データをはじめ、セミの生態や抜け殻の検索表、調査ルートの地図を盛り込んでいる。
子どもたちの考察もあり、日が当たらず地面が湿りがちなエリアに多いニイニイゼミについて「小さいため、湿った土の方が潜りやすいからか」などと記載。岡山理科大の中村圭司教授(動物生理・行動)は「都市化や地球温暖化によってセミの種類や生活の変化が起きている。10年間、毎年100個以上の抜け殻を採集し続けたのは貴重な調査記録」とコメントを寄せている。
初回から毎年参加する岡山市立陵南小6年の男子児童(12)は「調査を通して地球環境の変化を知るきっかけができた」と話した。
B4判三つ折り。同法人の事務所に置いているほか、ホームページでも見られる。調査は今夏も実施しており、引き続きデータを蓄積していくという。