自社のウェブサイトが気候変動にもたらす影響 環境負荷を低減するには

Photo by Annie Spratt on Unsplash

航空業界や農業、製造業、石油産業が、気候変動を深刻化させる要因になっていることは知られている。実は、IT産業もその一つだ。私たちが毎日、スマートフォンやパソコン上で行っているタップ、クリック、スワイプといった動作が環境に負荷を与えているとは想像しづらいかもしれないが、インターネットを国に例えると、ドイツに次ぐ世界第7位のCO2排出国といわれる。(翻訳=井上美羽)

洗練され、あらゆるものを兼ね備えた、無臭の機械が環境汚染につながるようには思えないかもしれないが、実際にはガジェットやインターネット、そしてそれらを支えるシステムから出るCO2の量は世界の航空業界の年間排出量に匹敵する。

持続可能な社会を実現するためにウェブサイトを変更・改良することは、同時に、そのウェブサイトをより良いものにするというメリットもある。実際に、環境への負荷を考慮したウェブサイトは、よりユーザーフレンドリーで、より速く作動し、見た目もより良く、より簡単にナビゲートすることができる。さらに、シンプルで、無駄がなく、最小限のデザインで動作も軽い。検索結果も最適化され、アクセスしやすく、メンテナンスの必要性も低く、維持費も安い。

このように、環境負荷の低減だけではない多くのメリットがあるのだから、自社のサイトを改修しない理由はないだろう。

企業のオンライン資産が排出する炭素重量は以下の5つの観点から査定できる。

1. 着手する前にまず検討する

21世紀型の大量生産方式はもう古い。従来のモデルに頼るのではなく、初めからリーン生産方式やアジャイル方式を取り入れることでウェブサイトの構築を効率化し、プロジェクトのライフサイクルにおいて必要なリソースを減らすことが可能になる。

ウェブサイトの炭素重量バジェット(予算)を設定することで、開発者はコンテンツを最小限に抑えるよう意識できる。平均的なウェブページの容量は5MBで、2003年の26倍にもなっていることに留意する必要がある。

2. 見つけやすさとコンテンツ

人々があなたのウェブサイトをより簡単に見つけられるようにすることは、良いマーケティング手法というだけではない。SEO対策はフロントエンド(ユーザーが利用する部分)のエネルギー消費量を削減するのに役立つ。

同様に、ウェブサイトで使用する画像、ビデオ、モーションコンテンツ、GIFが多いほど、消費されるエネルギーは増える。ほとんどのウェブサイトで、画像はページの重さを左右する最大の要因となっている。動画を再生するウェブサイトは、動画を再生しないウェブサイトよりもページ重量が1〜2桁重くなり、ユーザーのCPUに高い負荷をかけるため、消費電力を大幅に増加させる。

3. UX とデザイン

優れた情報アーキテクチャ(IA:情報を整理しユーザーにわかりやすく伝えるための手法)とユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザーが一つの製品・サービスを通じて得られる体験)は、設計の最初の段階で考慮するべきだ。実際、IA・UXデザイナーは、ウェブサイトの環境へのインパクトを大きく左右する重要な役割を担っている。

ワイヤーフレーム(ウェブサイトのレイアウト設計図)やユーザージャーニー(ユーザーがサービスに触れるまでのシナリオプロセス)の簡素化、読み込み時間の短いフォントやタイポグラフィの優先使用、さらに最近ではダークカラーやナイトモードの使用も重要な要素だ。

グーグルは、グーグルマップを夜間モードで使用すると63%ものスクリーン消費電力を節電できると発表している。

4. 持続可能なウェブ開発

上手く書かれたコードは、より持続可能なコードともいえる。より効率的というだけでなく信頼性、安全性、保守性においても性能が上がる。100行で書いていたコードを10行で書けるようになれば、ファイルのサイズが小さくなるだけでなく、そのファイルを処理するためにサーバーがしなければならない作業量も減らせる可能性が高い。

5. 持続可能なホストを選ぶ

ウェブサイトのホストであるデータセンターは、データの保存と処理のために膨大な量の電力を使用する。そのため、どこのデータセンターを利用するかも賢く選択する必要がある。センターによっては、他よりも環境への負荷が高い場合がある。エネルギー効率のレベルや、グリーンなエネルギー源を使用するための有意義な取り組みを行っているかどうかを意識して確認しよう。

サステナブルと評されるホストは、これらのすべての領域で環境への悪影響を最小限に抑えるように努めている。より環境負荷の少ないウェブサイトをつくろうと考えているならば、最も環境負荷の低いホストを選ぶことを目指してほしい。

意識的にウェブデザイン改革を

進化し続けるインターネットだが、その管理者として気候変動問題の解決に貢献したいと願うなら、私たちは自らの責任を認識し、自分たちにできることを理解することが必要だ。

些細なことに思えるかもしれないが、テクノロジーの普及規模が非常に大きいということは、世界のデジタル環境におけるささやかな変化が、地球環境に大きな影響を与える可能性があるということなのだ。

今こそ、私たちは業界として強大な役割を担っていることを認識し、意識的にウェブデザインを改革していかなければいけない。

人類の才能を生かし、ウェブサイトの構築方法を見直し、無駄を省き、エネルギーを節約する必要がある。そうでなければ環境汚染に加担することになる。

生態学的、経済的、社会的にも転換点に立っている私たちは、デジタルレベルでもより環境に優しく、よりクリーンな考え方をする必要があるのだ。

© 株式会社博展