民家に侵入… 冷蔵庫も開けて… 島の住民 vs. イノシシ 主役はどっち?

繁殖力が高く、食欲旺盛で知恵もある! 農作物への被害が各地で問題となっているイノシシ。

【写真を見る】民家に侵入… 冷蔵庫も開けて… 島の住民 vs. イノシシ 主役はどっち?

だが、この島では田畑だけでなく、民家の中にも被害が及んでいる。

瀬戸内海に浮かぶ広島・尾道市の離島「百島(ももしま)」だ。きょうのテーマは、『主役はどっち? 島の住民 vs. イノシシ 瀬戸の島にて』。

島の人たち
「いや、不安ですし、そりゃ恐いです」

「飲みものも、ビールも飲まれましたよ」

自腹を切って、いろんな防護柵で住宅を囲んでいるが、「猪突猛進」は止まるのか? その実態を追ってみた。

ここ2~3年、尾道市の離島・百島では、イノシシが民家に侵入するという全国でも極めて珍しい出来事がひん発しています。

百島は、行政的には尾道市百島町。向島の東側にある面積およそ3平方キロの小さな島です。その島がイノシシ被害に遭っているのです。高齢化が進むこの島で繰り広げられている、住民とイノシシとの攻防戦を取材しました。

周囲およそ12キロの百島には400人余りが住んでいます。以前は野菜やかんきつ類などを育て、平穏に暮らしていたといいます。

異変が起きたのは、十数年前…。「イノシシが上陸した」という島内放送が流れたといいます。

百島に向けて泳ぐイノシシを見たという住民もいます。

有害鳥獣捕獲班員 京泉盛勇さん(72)
「泳いでいるのを撃ちましたよ。2頭泳いでたんじゃけど、1頭は逃がしましたね。小さかったので」

畑を荒らすだけではなく、民家に侵入するようになったのは、ここ2~3年だといいます。

百島の高齢化率は66.5%。耕作を放棄した畑や空き家が増えています。

その空き家に入り、鋭い臭覚で漬物などの好物にありついたイノシシが、人が住む民家にもおいしい食べ物があることを学習したというのです。

おととし5月から去年9月までの民家被害は82件、ことしも先月に7件の被害があったそうです。

旗手タヤ子さん(88)
「わたしのいとこが猟友会に入っとるんですよね。『東大の院生よりえらい』そうな。冷蔵庫を開けて、もう冷蔵庫もあちこちほとんどの人が壊されとんですよ」

「中のものを全部、食べて。飲みものも、ビールも飲まれましたよ。ちょっと開けて飲むんでしょう。ポカリスエットとか、そういうふうなものも飲まれました」

今、島では、イノシシ対策に追われています。

旗手敏信さん(66)
「人間が檻の中で生活しているような…」

タヤ子さんの息子・敏信さんは、手製のクギの板戸を出入り口にすえ付けました。

旗手敏信さん
「イノシシは鼻のあたりがやわらかいから。鼻で突いたときに、もうそれから全く来なくなった。だから1回、家に入られて、次の日くらいにクギの板戸を付けていった」

「夜中の何時くらいだったかな、目を覚ましたときにイノシシがギャッと言いながら逃げていったというのがありましたね、これのおかげで」

こうしたクギの板戸のほか、島の民家の多くは、有刺鉄線に電気柵、メッシュの金網などで囲まれています。

しかし、尾道市から補助金が出るのは畑の防護柵などが対象で、民家の囲いは自前となります。

旗手タヤ子さん
― お金はいくらかかった?
「70~80万円はかかったでしょう。イノシシ対策で」

守っているだけではありません。10年以上、捕獲班員を務める京泉さんたちは、これまでに400頭以上を銃や箱ワナで駆除したといいます。

それでも、ため息交じりにこう話します。

有害鳥獣捕獲班員 京泉盛勇さん(72)
「おるものを捕ってしまって、なくなるっていえば、捕ってしまえばええんじゃが、よそから泳いで増えてくるぶんには手の打ちようがない」

今、百島では観光に力を入れ、島の外からの集客を図っています。町内会からはこの点への影響を心配する声が聞かれます。

百島町内会長 旗手憲一さん(74)
「今ね、百島はマリンスポーツ観光で、まあ行政も考えとって、そちらの方がもしイノシシが被害が起きると、深刻な状況になりますよね、観光の」

小さな島で続く島民とイノシシの終わりの見えない戦い…。

救いは今のところ、けが人が出ていないことです。

© 株式会社中国放送