国境離島新法施行から5年 人口の社会減抑制 1000人超の雇用を創出

人口の社会増減の推移

 領海保全などのため国境に近い離島の地域社会維持を図る国境離島新法は2017年度の施行から5年が過ぎた。雇用促進事業により長崎県内では五島列島や壱岐、対馬で千人超の雇用が生まれ、移住者の増加などで転出が転入を上回る人口の社会減が一定抑制された。ただ、新型コロナウイルス禍の影響も出ている。10年間の時限立法の後半5年、各自治体は雇用拡充事業を掘り起こし、「ウィズコロナ」を踏まえた新たな対策に注力する。

 国は同法に基づく交付金を年間50億円計上し、このうち二十数億円を本県に配分。五島、壱岐、対馬、西海、佐世保、新上五島、北松小値賀の7市町が対象となっている。
 支援の柱の一つが、島の経済基盤を強化するための雇用機会拡充事業。県によると、5年間の関係7市町の採択事業は飲食や観光など計607件、雇用実績は1049人=グラフ参照=。このうち移住者は302人で、社会減を抑制する要因となった。
 雇用人数の単年度の目標は250人で、開始から2年間は上回った。ただ、その後は目標を達成できておらず、21年度は144人となっている。

7市町の雇用機会拡充事業の実績

 人口減少に対して、県は雇用拡充などにより同法施行5年で社会減の減少幅を半分に縮め、10年で増減の均衡を保つ目標を掲げている。同法施行前の社会減は五島、壱岐、対馬、新上五島、北松小値賀の5市町で年間1018人(15、16年平均)。これに対し4年目の20年には543人減まで改善した=表参照=。五島市は19、20年に2年連続で転入が転出を上回る社会増(計102人)を達成し、北松小値賀町も20、21年に転入者が上回った。
 ただ、21年は一転して5市町で901人減と減少幅が拡大した。五島市は「コロナ禍の中、家族での転入を控える傾向があったのが一因」とみる。
 それでも回復の兆しは出ている。県によると、22年1~5月は5市町で約530人減。減り幅は前年同期より約300人改善した。
 コロナ禍の中、仕事と休暇を合わせたワーケーションの受け入れ整備やサテライトオフィス設置など新しい動きが出ており、県は「ウィズコロナを見据えた移住、関係人口の拡大に力を入れたい」としている。


© 株式会社長崎新聞社