コロナ入院治療の公費申請書類500件超が未発送 感染急拡大で福井市保健所の業務停滞…2カ月遅れに

新型コロナ入院患者の診療報酬請求の流れ

 新型コロナウイルス感染者の入院治療費の「公費負担」に関わる申請手続きで、福井県の福井市保健所の発送業務が感染者数の高止まりで遅れ、少なくとも約500人分の申請書類が患者に郵送されていないことが8月26日、福井市保健所への取材で分かった。手続きが滞れば医療機関は診療報酬の請求ができず、すでに経営に影響が出ている病院もある。

 国は、新型コロナ患者の入院治療費を“全額公費負担”としている。公的医療保険で自己負担率3割の場合、「公費負担」の対象は3割分。残り7割分はほかの診療と同様、公的医療保険で賄われる。医療機関は3割分と7割分を合わせて支払機関に請求し、診療報酬が支払われる。

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 ただし、「公費負担」を受けるには手続きが必要だ。保健所から患者宛てに「入院療養費支給申請書」や「生活環境調書」などが届き、記入し返送すると保健所が医療機関に「患者票」を送る。「患者票」に記載された「公費負担医療の受給者番号」などがなければ、医療機関は診療報酬を請求できないという。

 福井市保健所によると、第7波による感染急拡大で、患者に申請書類を郵送する業務が停滞。6月末までに発送するべきだった書類は8月26日時点で、500件程度に上っている。市保健所の担当者は取材に「医療機関に大変お待たせすることになってしまい申し訳ない。6月末までに発送すべきだった分は8月末までに発送できるよう努める」と説明。7月以降の分についても、早急に発送を進めるとしている。

 新型コロナ入院治療費の公費負担を巡っては、保健所などによる代行申請も認められているが、患者側の申請が原則。市保健所の担当者は「書類が届いた際には速やかに記入して返送してほしい」と話している。

 福井県は9日付で、手続きの遅延が散見されるとして、早急に事務処理を進めるよう求める通知を県内七つの保健所に出した。県対策チームは「県管轄の6保健所では申請書発送の目立った遅れはない。患者から返送が遅い場合は代行申請で手続きを進めている」としている。

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