ソフトバンクGの赤字が影響も…日本企業の決算が好調な理由

日経平均は8月17日に2万9222円まで上昇しました。物価上昇率などの米国の経済指標が予想より弱く、ついにインフレがピークアウトしたのではとの期待が高まったことが要因です。

なぜそれで株価が上昇に向かうかというと、過度なインフレをなんとかしようと米国の中央銀行にあたるFRBがとても速いペースで進めている金融引き締めをまもなく緩める、止めるのではとの期待が高まってきたからです。


株価は「経済の温度計」と表現されることがあります。なぜなら株価は中長期的には企業の業績に連動するものであり、企業の業績はその国や世界の経済状況に左右される側面がとても大きいからです。現在はFRBが、「米国経済の熱が高くなり過ぎているので冷まさなければいけない」と考えて、あえて経済成長をスピードダウンさせようとしている状況なので、株式市場にとっては強い逆風が吹いている状況です。米国経済は世界経済の圧倒的な中心なので、当然日本経済や日本株も大きな影響を受けることになります。

ではこのような経済状態の中、日本企業の業績はどうなっているのか8月中旬に発表を終えた第1四半期(4-6月期)の東証プライム上場企業の決算発表を見ていきましょう。3月末決算を採用しており第1四半期の決算発表を終えた1,235社について集計を行いました。

まず総論としては、世界経済がスローダウンする中でも日本企業の業績はしっかりしているといって良さそうです。以下の表に示した通り、売上高は前年同期比16%増の180.4兆円としっかりと増加しました。一方経常利益は18%減の13.6兆円と減益となっており、一見不調のように見えます。減益となってしまっている最大の理由は、ソフトバンクグループ(9984)の不調によるものです。ソフトバンクグループは投資会社のようになっており、保有株の価値下落が決算に反映されて前年同期の1.3兆円の黒字から3.3兆円の大幅赤字に転落してしまいました。このソフトバンクグループの影響を除いて計算すると、経常利益は前年同期比約10%の増益となります。

業種別に見ていくと、陸運業・海運業・空運業といったモノや人の移動に関わる業種や石油石炭製品や鉄鋼といった原材料価格上昇の恩恵を受ける業種の好調が目立ちます。これらはアフターコロナに向け経済正常化が続く中で恩恵を受けている業種といえそうです。一方で輸送用機器、パルプ・紙、電気・ガス業などは、原材料高が業績を直撃しいずれも減益となっています。

それでは最後に、特に目立つ好決算を発表した会社を2つご紹介します。まずはオリエンタルランド(4661)です。ディズニーランドやディスニーシーなどを運営する同社が発表した決算では、売上高が前年同期比約2倍の981億円、営業利益が前年同期の88億円の赤字から170億円の黒字に転換しました。コロナ禍による入場制限などの影響が薄れ、入園者数が大きく増加したことが業績改善の最大の要因です。コロナ禍でディズニーランドやディスニーシーへの期待や好感度が下がってしまったわけではなく、「行きたいのに行けない」ファンが大勢いることを改めて示した結果といえるでしょう。

続いてボウリングやカラオケ、卓球などの複合アミューズメント施設を運営するラウンドワン(4680)も素晴らしい決算を発表しました。第1四半期の売上高は前年同期比69%増の309億円、営業利益は前年同期の35億円の赤字から23億円の黒字に転換しました。同社の決算で印象的なのが、コロナの影響が出る前の2019年4-6月期と比較してもすでに業績は同程度から上回るまで成長していることです。2019年4-6月期の売上高は255億円、営業利益は23億円であり直近決算の売上高は約2割増えています。ボウリングやカラオケなどを値上げした上でも顧客離れが起きていないことが業績好調の理由のようです。同社は第1四半期時点で年間の業績予想や配当予想を上方修正し、業績の勢いを感じさせる内容となりました。

これまで見てきたように、米国の金融引き締めや原材料高の影響を受けながらも日本企業全体としては堅調な業績を達成しています。さらに今後は外国人観光客の入国受け入れ増などから一段の業績加速を期待できる可能性もありそうです。ぜひ早期に日経平均の3万円回復を期待したいところです。

© 株式会社マネーフォワード