MotoGPマシンGSX-RRの経験はわずか。渡辺一樹がミルの代役に選ばれた顚末/第14戦サンマリノGP

 8月26日(金)にチーム・スズキ・エクスターから負傷しているジョアン・ミルの代役としてMotoGP第14戦サンマリノGPに渡辺一樹を起用することが発表されたが、当の本人は、現在、全日本ロードレース選手権第6戦オートポリスの真っ最中。どんな顚末だったのかを直撃してみた。

渡辺一樹(YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN)/2022全日本ロード第6戦オートポリス

「ボルドール24時間耐久の事前テスト(8月30~31日)に行くことが決まっていたこともあり、月曜日(22日)の時点で(ジョアン・)ミルの欠場が発表され、シルバン(・ギュントーリ)も怪我をしているので、スズキの方にコンタクトを取りました」と渡辺。

「すると水曜日(24日)の時点で可能性が高くなってきていることが分かって、ソワソワし始めていたのですが、木曜日(25日)の夜の時点で“代役をお願いすると思う”と打診を受けて金曜日(26日)の朝に決まりました」

 MotoGPにデビューすることが決まった渡辺だが、MotoGPマシンのスズキGSX-RRに乗った経験は、僅かしかないそうだ。モビリティリゾートもてぎでスズキがMotoGPマシンのテストを行う際、EWCマシンのテストで一緒に走る機会がここ数年は多かったが、そのときに渡辺もGSX-RRをテストする機会があったのだが……。

「僕がヘルメットをかぶると雨が降り始めるという現象が、そこでも起きまして……。ピットアウトして、そのまま戻るという計測ゼロ周でした。その後、竜洋のテストコースでも走らせてもらったのですが“シームレスってすごいな”っていうくらいでした(笑)」

渡辺一樹

 サンマリノGPの開催地であるミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリは、2017年にスーパースポーツ世界選手権(WSS)にフルエントリーしたときに走っているが、600ccとMotoGPでは、全く別のコースと言っても過言ではない。

「どちらかと言えば好きなコースです。“ハイスピードで楽しいな”という記憶はありますけれど、MotoGPとなればハイスピードすぎて怖いんだろうなって(笑)。600ccだとバックストレートエンドの右コーナーは全開なんですけれど、MotoGPだとブレーキするのかなぁ、とか思っています」

「僕の予想では、10人には首を振られると思いますが、それで焦るタイプでもないので“ごめんねごめんね”って言いながら楽しんで走ろうかなと。いろいろな偶然や巡り合わせが重なってチャンスをもらえたので、しっかり自分の身になる経験をしてきたいですね」

渡辺一樹(ヨシムラSERT Motul)/2022EWC第1戦ル・マン24時間

 渡辺は、全日本ロード第6戦オートポリスを追えた後、月曜日のフライトで渡仏しEWC最終戦ボルドール24時間のテストに参加。木曜日には、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリに入る予定。そして金曜日からMotoGPマシンを走らせることになる。

「2020年、2021年とテストばかりで実戦を走れなかった分、この2週間に押し込まれて凝縮されていますね(笑)。ありがたい話なので全力で楽しんで来ます」

渡辺一樹(YOSHIMURA SUZUKI RIDEWIN)/2022全日本ロード第6戦オートポリス

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