自主夜間中学開校1年、学習者80人に倍増 今春8人が高校へ 宇都宮、小山

1年間の歩みを語るとちぎ自主夜間中学宇都宮校の川村校長=7日夕、宇都宮市中今泉3丁目

 高齢者や外国人らに学び直しの場を提供するとちぎ自主夜間中学は8月で開校から1年がたち、宇都宮校と小山校の学習者は計約80人と当初の倍に増えた。元教員や宇都宮大生らがパートナーとなって二人三脚で学びを支え、今春8人が高校へ進学するなど成果も出ている。宇都宮校の川村滋(かわむらしげる)校長(71)は「多様な学習者の多様な夢に応えるため、学習内容を充実させたい」と意気込み、国が各都道府県に求める公立校の設置も後押ししたい考えだ。

 年齢や国籍にかかわらず「誰もが学べる場」を目指し、2021年8月に学習者約40人でスタートした。進学や日本語習得の夢を抱き、毎週日曜夜に約2時間、宇都宮市内の公共施設などで知識を深めている。

 学習者の年齢は小学生から70代まで、国籍も日本、フィリピン、ペルー、ブラジルなど多彩だ。個別学習が原則で、元教員など個性豊かなパートナーと絆を強めながら夢に向かう。

 今春高校に進学した8人は宇都宮工業高の定時制や学悠館高などで学ぶ。最終学歴が中学校卒業の宇都宮市、アルバイト男性(42)は宇都宮商業高の定時制に進んだ。「学ぶ楽しさを夜間中学で知った」と感慨深げに語る。

 ただ夜間中学の運営には、新型コロナウイルス禍が影を落とす。感染が急拡大し県が「BA・5対策強化宣言」を発令したことを受け、8月末まで休校する見通しだ。

 川村校長は「休み時間も惜しんで勉強するなど学習者の学ぶ意欲は高く、コロナ禍で思うように授業ができないのが心苦しい」と語る。

 県内に公立校は未設置だが、全国的には設置したり、検討に入ったりする自治体が増えている。国は各都道府県と政令市に1校以上の設置を求めているからだ。4月現在で15都道府県の34市区に計40校ある。

 隣県では、茨城県は設置済み、福島市は24年4月に開校を予定し、群馬県も検討に入った。県教委によると、本県ではまだ具体的な検討はしていないという。

 20年の国勢調査で、最終学歴が小学校卒業の人は本県で1万2145人に上った。川村校長は「ニーズは確実にある。自主夜間中学が社会を動かす力となって、公立校の設置を後押ししたい」と力を込めた。

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