完璧なピットタイミングから楽勝展開も……「本当に最悪」Astemo NSX-GT、痛恨のガス欠で2位【第5戦鈴鹿GT500決勝】

 鈴鹿サーキットで行われた2022スーパーGT第5戦のGT500クラス決勝。レース終盤までは完璧な展開に持ち込んでいた17号車Astemo NSX-GTだったが、2回目のピットストップで当初の予定よりも給油量が少ないというトラブルが発生し、すぐそこまで見えていた勝利を逃す結果となった。

 2番グリッドからスタートした17号車は松下信治がスタートドライバーを担当。今回はGT500クラスでもピットストップのタイミングがばらける印象があったが、17号車を担当する田坂泰啓エンジニアは「うちは今回、いたって常識的なプランを立てていて、基本的には3分割する感じでいました」と説明。

 トップを走っていたMOTUL AUTECH Zが17周目と早めにピットインするのを見て、それに合わせるか悩んだところもあったが、変則的なプランにすることで満タン状態になってしまうのは避けたいと考えていたという。

 トップに立って以降は、背後にいる16号車RedBull MOTUL MUGEN NSX-GTをマークし、彼らがピットインした2周後の29周目に1度目のピットストップを敢行。結果的に16号車の先行を許したが、田坂エンジニアは「450kmのレースの中で、どうしても前に行ったり後ろに行ったりしてしまうので、そこは一喜一憂しても仕方ない。だから(その時の順位は)気にせずに、淡々とやろうと思いました」と冷静でいた。

 そこから再びトップに返り咲くチャンスをつかんだのが、レース後半の48周目。ちょうど16号車を先頭に、38号車ZENT CERUMO GR Supraと3台が接近している状態だったが、この時のラップタイムを見て、田坂エンジニアが2度目のピットストップを決断した。

「当初、2回目のピットストップは52周あたりがターゲットだったんですけど、その前に16号車のペースに付き合って1分54秒台で走っている状態でした。そこでピットに入った後の場所を想定して、その辺にいる人たちのペースをみたら1分52秒台でした。だから、ここ(16号車の後ろ)で揉まれるよりは、こっち(ピットストップを終えた後の場所)で揉まれた方が良いだろうと思いました。それで『動いてしまおう』ということになりました」

「その分、最終スティントで使うタイヤの周回数が多くなってしまいますが、1分54秒台で走っているよりは良いだろうということになりました」と田坂エンジニア。すると、17号車がピットアウトし直後にセーフティカーが導入され、16号車と38号車が後手を踏むことになるのだが、「あれはラッキーでしたね」と振り返った。

 これで、優勝に大きく近づいた17号車だが、同時にピットでは“大事件”が発覚していた。2度目のピットストップでの給油量が、当初の予定を大幅に下回っていたのだ。

「ガソリンがちゃんと入っていなかったのです。詳しい原因は今探っていますけど、予定していた量の3分の2しか入っていなくて……。もう1回ピットに入って給油し直すレベルの足りなさでした」と田坂エンジニア。

 幸い、セーフティカー導入に伴うペースダウンで、燃費を稼ぐことはできたものの、最後まで走りきるには厳しい状況だったで、「最初はターゲットの燃費を伝えて走ってもらっていましたが、それでもダメで、(塚越)広大に『申し訳ない。抜かれてもいいので、燃費走行をしてくれ』と伝えました。本当、最悪でした」と、田坂エンジニアは肩を落としていた。

 最終スティントを担当した塚越広大は「第3スティントの後半になって、ガソリンが入っていないということが判明しました。ギリギリ走れるというレベルではなくて、確実にストップしてしまうという感じだったので、あそこまでのペースダウンを余儀なくされました」と状況を説明。

「正直、クルマの調子も良かったし、展開も良かったから、勝てるレースでした。そこで勝てなかったのは残念ですけど、止まるかもしれないとう状況から、ちゃんとゴールまで持っていけて、2位表彰台を獲得できたのは、上出来かなと思います」と、塚越は悔しさを堪えながら話していたが、「最後はチャンピオンをとって、笑ってこのレースを振り返ることができるようにしたいですね」と、今回起きたことを前向きに捉えようとしていた。

2022スーパーGT第5戦鈴鹿 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)

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