“デジタル世代の作品に期待” 3人の版画作家、南島原市が招待 廃校で創作活動、AIR事業再開

独自のテーマで創作に励む(右から)横山さん、山下さん、日髙さん=南島原市、アートビレッジ・シラキノ

 国内外の版画作家を地元に招待し、芸術活動を支援する長崎県南島原市の「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」事業が今夏、1年ぶりに再開し、3人が同市南有馬町の滞在型交流拠点施設「アートビレッジ・シラキノ」(旧白木野小校舎)で創作に励んでいる。
 同市は戦国時代、日本で初めての銅版画が制作された土地とされる。
 2018年に始まったAIR事業は今年で6回目。作家はその土地の文化や歴史に触れ、住民と接する中で、新たな作品の創造を目指す。受け入れ側は作家の創作活動を通じて地域の魅力を再発見できるなど、双方にメリットがある。これまで計13人を招いた。巣立った作家の中には、その後、国際的な芸術家として活躍している人もいる。
 今回は一般公募で、横山麻衣さん(32)=神奈川県=、山下拓也さん(34)=三重県=、日髙衣紅さん(32)=千葉県=が選ばれた。来月30日まで滞在し、創作活動のほか、ワークショップやギャラリートーク、成果展をする。
 横山さんは「闇の中に都会にない深さ、美しさを感じる」、日髙さんは「工房の窓から見える有明海と棚田のコントラストが素晴らしい」と南島原の自然に魅了された様子。山下さんは「ここでしか学ぶことのできないキリスト史や印刷技術を吸収して、作品に表現したい」と抱負を語った。
 東京の版画家で、同施設教育普及係の池田俊彦さん(42)は「3人とも地域に溶け込もうとフィールドワークに意欲的。多くの方が版画と言えば、木版画を想像されると思うが、今回はデジタル世代の版画作家の作品を通じて版画の現代性が垣間見られると思う」と期待を寄せた。


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