秋から「ジオ」でスタートへ 串本町、漁船でロケット見学事業

漁船からロケットの打ち上げを見学する取り組みの試運航で、海側から橋杭岩を見る参加者(和歌山県串本町くじの川沖で)

 和歌山県串本町田原の民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」で年末ごろに予定されている初号機の発射が近づく中、同町の南紀串本観光協会と地元の旅行業者「令和トラベル」が、漁船から打ち上げを見学する観光クルーズの準備を進めている。取り組みに協力してくれる漁船が決まり、関係者がこのほど試運航を体験。今秋から、まずは国の名勝・天然記念物「橋杭岩」などを海の上から眺めるジオクルーズを始める予定だ。

 漁船を活用した観光クルーズは、ロケットをきっかけに新しい観光コンテンツを創り出し、同時に漁業者の経営支援にもつながればと計画。説明会を開くなどして協力してくれる漁船を募ったところ、第1号としてトラック運転手で漁船「光芽那(みつめな)丸」(4.6トン)を所有する和歌山東漁協准組合員の瓜田有冶さん(44)=串本町潮岬=が名乗りを上げてくれたという。

 町や県の行政関係者ら9人が参加した試運航がこのほどあり、光芽那丸に乗り込んで串本漁港を出港。1時間ほどかけて、橋杭岩や紀伊大島にある海食洞、ロケット発射の見学を予定している場所、くしもと大橋などを巡って見学した。参加した東牟婁振興局企画産業課の内西浩一主任(50)は「橋杭岩を普段とは違う角度から見ることができ、新たな発見だった。観光コンテンツとしてかなり期待できる事業」と満喫。瓜田さんも「町の活性化につながる事業だと聞き、興味があって参加した。県内外から多くの方に訪れていただき、楽しんでもらえるように頑張りたい」と意気込んだ。

 今後、主に「ジオ」を巡るクルーズを定期的に運航しながらロケット打ち上げの本番に備える計画。令和トラベルの岡本将和代表(41)は「これからも試運航をし、皆さんの意見を聞いて微調整をしながら取り組んでいきたい」、観光協会の宇井晋介事務局長(66)も「ロケット打ち上げを目指して進めているが、普段はジオクルーズとして運航したいと考えており、今年の秋から事業を始めたい。第1号の漁船が決まり大変ありがたい。新たに加わってくれる漁船も募りながら仕組みを作っていきたい」と話している。

© 株式会社紀伊民報