【tvk吉井アナ】日本一の前年も、壁はヤクルトだった 9月、石井一久投手にノーノー食らう

1997年に10勝を挙げ、チームの躍進に貢献した川村さん(現神奈川フューチャードリームス監督)と吉井さん(右)

 月に1回程度、tvkのナイター中継を担当するアナウンサーが、日々の出来事やエピソードをコラムでお伝えします。今回は吉井祥博アナウンサー。

 ベイスターズファンの方々から「1997年に似てきましたね」と頻繁に問いかけられることが多くなりました。

 既にたくさんの人たちが示していますが、ベイスターズが日本一になった98年の前年の97年は、8月に20勝6敗と月間勝利数で球団新記録に到達。確かに8月の好成績と、追う相手がスワローズである点は、今の状況と共通しています。

 道のりは長くとも、ファンは優勝への息吹を感じています。97年にルーキーとして10勝を挙げた川村丈夫さん(現神奈川フユ─チャードリームス監督)は「当時のチームは試合を離れると、例えば一緒に食事に行くような仲の良さはなかった。でも、いざ試合になると一丸になって勝利へと向かっていた」と振り返ります。

 25年前のベイスターズは今の一体感とはまた少し雰囲気が違う大人のチームだったようですが、勝つことに貪欲だったと感じます。

◆「失速」ではなかった

 何より気になるのはここから先です。97年は首位スワローズに一時2.5ゲーム差に迫りながら9月の直接対決で1勝4敗と負け越し、一方でスワローズは勝負どころで加速しました。

 中でも当時のファンにとって心に刻まれているのが、9月2日に石井一久投手(現イーグルス監督)に横浜スタジアムで喫したノーヒットノーランです。そこからベイスターズは失速したように語られていますが、実際には同年9月の戦いは9勝11敗。8月の勢いそのままではありませんでしたが、失速と言い切れる数字でもなかった印象があります。

 9月17日には神宮で戸叶尚投手が5回までノーヒットの投球、6回にまたもやベイスターズの前に立ちはだかる石井一久投手に本塁打を打たれ敗れましたが健闘しました。何よりこの年、スワローズには14勝13敗と勝ち越しました。それでも、優勝には届かなかったシーズンでした。

 参考までに、翌98年に首位を走るベイスターズは、9月入って2位ドラゴンズに5戦全勝。優勝争いをするチーム同士の直接対決はペナントレースの結果に直結すると改めて感じます。

 まだ差はあるものの首位に食らいつき、ベイスターズはあの時とは違う栄冠を手にできるのか。勝負の9月を迎える今、就任当初から三浦大輔監督が話していた「皆が一つになって戦うこと」が実現したかのように、誰かの活躍が全員の笑顔につながっています。

 簡単なことではありません。でも、残された首位との直接対決6試合を含めた過密日程を、どうか今の雰囲気のまま無事に戦ってほしいと心から願っています。

◆いずれ花開く男

 いまさらですが、去年の6月に解説としてtvkの放送席に来ていただいた際に語っていた、現在チーフ投手コーチ斎藤隆さんの言葉を思い出しました。「現役時代から、スタートでは目立たなくても一つ一つやるべきことを重ね、いずれ花開く。三浦大輔とは、そういう男です」

 花開くときを想い、目の前の戦いを大切に放送席からお届けします。

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