『日本共産党 暗黒の百年史』を書き終えて|松崎いたる 元共産党員が克明に綴った内部告発の書。党史研究の最高傑作が遂に刊行!日本共産党がこれまでやってきたこと、これからやろうとしていることが全て分かると話題!

はじめて著書である『日本共産党 暗黒の百年史』がおかげさまで好評を得ている。この種の本では賛否両論あるのは当然だが、「面白かった。多く人に読んでほしい」「歴史を網羅していて、知らなかったことをいろいろと知ることができた」などのお褒めの言葉もいただき、筆者として無上の喜びを感じている。

ファクトに基づいた「暴力革命」の検証

日本共産党史研究の最高傑作! 2000円(税込)

あらためて三点ほど、本書の読みどころを紹介させていただきたい。

ひとつは、日共の「暴力革命」路線についてである。1951年、日共は暴力革命をめざして、いわゆる「51年綱領」を採択し、51~52年にかけて実際に数々の暴力・騒乱事件を起こしている。年配者にはすでに周知の事実だが、さかんに「平和」を叫ぶ現在の日共の姿しか知らない若い人には、意外なことかもしれない。しかも当の日共は現在、「暴力事件は分派の仕業で党とは無関係」と主張し、「51年綱領」すら認めていない。本書で、政治的テロでもある「暴力革命」について、事実を踏まえた検証をしたことは、現代的な意義がある確信している。安倍元総理の暗殺という惨劇を目の当たりにしたいま、本書をきっかけに政治と暴力の問題を考えていただければ幸いである

「リンチ致死事件」に再びメスを

つぎに、歴史の闇の中に葬られようとしている日共のリーダー・宮本顕治による戦前の「リンチ致死事件」に再びメスを入れ、明るみに引き出したことである。

この仕事は1970年代にすでに故・立花隆氏の『日本共産党の研究』によって、十分に究明された感がある。しかし、それから50年以上が経過した。本書では知の巨人・立花氏の研究にも依拠しつつ、いわば巨人の肩の上に乗って、さらに広い視野でリンチ事件の再検証を試みた。リンチを受け死亡した犠牲者の死因について、立花氏の「外因性ショック死」(暴行死)の説と、宮本顕治による「内因性ショック死」(特異体質による急死)という説の対立があるが、本書では1980年代後半になって初めて解明された医学症例を根拠に、死因についてのあらたな仮説を提案している。日共は現在もリンチ暴行の事実すら「特高によるでっち上げ」として認めていないだけに、歴史的な検証が必要な問題である。

同性愛者を差別・迫害してきた事実

三つ目は、いまでこそ、LGBTの権利擁護や多様性の尊重を看板に掲げている日共がつい最近まで、「退廃」として同性愛者を差別・迫害してきた事実を発掘していることである。日共の同性愛差別の根源は、同党が理論的基礎としている「科学的社会主義」の創始者であるマルクス、エンゲルスの思想にあることを明らかにした。彼らは性愛の本質は「生の生産」にあると主張していた。「同性愛は生産性がない」という保守政治家の発言を目の敵に攻撃する日共だが、その元祖はマルクスにあったのである。

同性愛差別の問題は、党創立100年にあたって刊行された他の類書ではまったく触れられておらず、本書だけの特色である。日共を多面的、客観的にとらえる上で、ぜひともお読みいただきたいゆえんである。

読者のみなさんの忌憚のないご批評を賜りたい。

松崎いたる

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