HISがハウステンボス売却発表 新資本 観光促進に期待 地元関係者の声は

エイチ・アイ・エスが売却を発表したハウステンボス=30日、佐世保市

 旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)は30日、傘下とする長崎県佐世保市のハウステンボス(HTB)を香港の投資会社PAGに売却すると発表した。現在の営業は継続し、雇用も維持される見通しで、県内の観光、経済関係者からは、九州を代表するテーマパークとしてのさらなる観光促進、地域振興を願う声が上がった。

 「地元経済と連携し、これからも本県観光の牽引(けんいん)役を担ってほしい。海外からの集客を考えた展開にも期待する」。佐世保観光コンベンション協会の飯田満治理事長は、新たな資本の元での運営を前向きにとらえる。
 佐世保商工会議所の金子卓也会頭は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致も踏まえ「PAGにとってビジネスチャンス。ハウステンボスは地域の観光、経済の大きな柱。PAGの資金、情報力などを考えると(運営に)大いに期待できる」と述べた。一方、香港のファンドであるため、基地関係者には「不安があるかもしれない」との見方を示した。
 佐世保市内のホテル関係者は「アジアからのインバウンド、コロナ後の展開、IRの誘致など、今以上の集客を望む。ハウステンボスが盛り上がれば周辺の産業が潤う」と語った。
 地元の取引業者は今後の状況を注視しながら「取引の値段交渉など不安な面もあるが、これまでのノウハウや地の利を生かしていく。インバウンドの集客、IR誘致など将来的な期待は大きい」。別の取引関係者は「投資会社なので、高値で売り抜けるのが目的。そうなると、いまより厳しい条件を示してくる可能性もある。すぐに影響があるとは思わないが、経営が変わればやり方も変わるだろう」と口にした。
 HTBの社員は、PAGがユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社への投資実績があることに触れ、大規模な投資にも期待しているという。一方、HISが運営から手を引くことで「方向性が変わっていくかもしれない。現体制が改革を進め好転している状況だが、それも変わってしまうことがないか不安な面もある」と語った。
 市民はどう受け止めているのか。市内のアルバイト、藤木憂香さん(22)は「不安はない。アトラクションや芸術などにもっと力を入れて、どんな世代も行きやすいテーマパークになってほしい」。この日、HTBを訪れた市内の自営業、山口美智子さん(64)は「開園時から年間パスポートを購入して足を運んでいる。経営者が変わっても、自然と建物のきれいな風景を維持してほしい」と観光資源としての魅力を強調した。


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