京セラ創業の稲盛和夫さん死去、福井県内経営者ら別れ惜しむ 哲学実践で“倒産予備軍”から急成長遂げた企業も

盛和塾「福井」が主催した講演会で人生哲学を聴衆に訴えた京セラ名誉会長の稲盛和夫氏=2005年12月、福井県福井市のフェニックス・プラザ

 京セラの創業者で名誉会長の稲盛和夫さんが8月24日、老衰のため死去した。京セラを一代で世界的メーカーに育て上げ、通信自由化の局面では第二電電企画(現KDDI)を設立してNTTの牙城を切り崩すなど、その手腕は「現代の松下幸之助」「ベンチャーの神様」と言われた。企業経営者に経営哲学を教える「盛和塾」のネットワークは福井県内にも広がり、稲盛さんの哲学に感銘を受けた多くの経営者が“人生の師”との別れを惜しんだ。

 福井キヤノン事務機の玉木洋会長は盛和塾「福井」に立ち上げから参加し、代表世話人も経験。稲盛さんとの交流を振り返りながら「急激に変化し続ける現代にあっても、稲盛さんが常に語った『経営者には哲学が必要』ということだけは変わらない」と強調した。

 福井商工会議所の八木誠一郎会頭(フクビ化学工業社長)も盛和塾「福井」で学んだ一人。「自身の経験を語っても『これが正しい』とは言わなかった。手本ではなく、見本を示してくれた」。OEM(相手先ブランドによる生産)の際にも「相手の言う通り作るだけでなく、最終消費者のことを考え、相手先にいろいろな提案をする。土俵の真ん中で勝負する経営は稲盛さんの教えのおかげ」と話した。

 「稲盛さんに救われた」と明かすのは、ラニイ福井貨物の藤尾秀樹社長。「一時は“倒産予備軍”と言われるほどの経営危機もあったが、稲盛さんにならって経営哲学を定め、実践することですべてが変わった」。社長である自身の心構えが変わり、次第に従業員が成長し「やがて売り上げや利益の数字も伸びていった」と感謝した。

 盛和塾「福井」は2019年の母体の閉塾とともに活動を終えたが、現在も藤尾社長ら元塾生同士の自主的な勉強会は続いている。

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