京セラの創業者で名誉会長の稲盛和夫さんが8月24日、老衰のため死去した。京セラを一代で世界的メーカーに育て上げ、通信自由化の局面では第二電電企画(現KDDI)を設立してNTTの牙城を切り崩すなど、その手腕は「現代の松下幸之助」「ベンチャーの神様」と言われた。企業経営者に経営哲学を教える「盛和塾」のネットワークは福井県内にも広がり、稲盛さんの哲学に感銘を受けた多くの経営者が“人生の師”との別れを惜しんだ。
福井キヤノン事務機の玉木洋会長は盛和塾「福井」に立ち上げから参加し、代表世話人も経験。稲盛さんとの交流を振り返りながら「急激に変化し続ける現代にあっても、稲盛さんが常に語った『経営者には哲学が必要』ということだけは変わらない」と強調した。
福井商工会議所の八木誠一郎会頭(フクビ化学工業社長)も盛和塾「福井」で学んだ一人。「自身の経験を語っても『これが正しい』とは言わなかった。手本ではなく、見本を示してくれた」。OEM(相手先ブランドによる生産)の際にも「相手の言う通り作るだけでなく、最終消費者のことを考え、相手先にいろいろな提案をする。土俵の真ん中で勝負する経営は稲盛さんの教えのおかげ」と話した。
「稲盛さんに救われた」と明かすのは、ラニイ福井貨物の藤尾秀樹社長。「一時は“倒産予備軍”と言われるほどの経営危機もあったが、稲盛さんにならって経営哲学を定め、実践することですべてが変わった」。社長である自身の心構えが変わり、次第に従業員が成長し「やがて売り上げや利益の数字も伸びていった」と感謝した。
盛和塾「福井」は2019年の母体の閉塾とともに活動を終えたが、現在も藤尾社長ら元塾生同士の自主的な勉強会は続いている。