Vol.06 動画撮影にオススメXマウントレンズ紹介[FUJIFILM X-H2S Experience]

富士フイルムのレンズ特徴

もはや風前の灯火と言われたカメラ業界がミラーレスカメラの登場で、ゆらりとその灯火を輝かせているようで嬉しく思う。特に長年愛用している富士フイルムが好調を継続しているのが楽しくて仕方がない。アナウンスされたばかりの「X-H2S」もとても良いカメラに仕上がっており、特にAF周りの進化は動画ユーザーにとっても感涙の出来栄え。これでさらに広い層にアピールして、より多くの動画ユーザーが富士フイルムカメラを使えば、より良い進化への布石となりますます楽しみが増える。

今回は、かれこれ「X-Pro2」から数えて、おそらく世界で最もXシリーズカメラでの動画撮影を行っているであろう経験を元に、富士フイルム・Xシリーズのカメラで動画撮影をする際にオススメのXマウントレンズを紹介する。

そもそも、富士フイルムのレンズ(フジノンレンズ)の魅力は、なんといってもその高い光学性能である。テレビ放送やハイエンドな映像撮影用レンズで培った技術を惜しみなく注ぎ込み、写りが良くてコンパクトなレンズを多数揃えている。特にボディとレンズとの一体感が秀逸で、そのバランスの良さは写真撮影時はもとより、動画撮影時のカメラオペレートで恩恵を感じる。絞りリングを有したレンズが多いのも特徴で、往年のカメラらしさを求めるロマン派にはその点も魅力。

最高性能のシネレンズ、明るい単焦点の大口径プライムシリーズ、小型軽量に特化したコンパクトプライムシリーズ、便利なズームシリーズなど、同じ焦点距離でも複数の個性が違うレンズがあり目的に応じて使い分けができるのも便利。たとえば、スタジオ撮影でじっくり撮る時はシネレンズ、ワンオペロケで山行ありきの撮影にはコンパクトプライムシリーズ、記録的なドキュメント撮影ではズームレンズ群といった具合に、その都度レンズの重量や大きさ、用途に応じて使い分けることができる。

もちろん、どのレンズの写りもしっかりとした品質が担保されており安心して使用できる。長く使っているとおのずと基本となるレンズセットが決まってくるもので、現在のメインボディである「X-T4」と組み合わせて動画撮影で大活躍しているレンズ達を次にてご紹介する。

動画撮影にオススメのXシステム対応レンズ紹介

■その1:フラッグシップ標準ズームレンズ XF16-55mmF2.8 R LM WR

  • 公式オンラインショップ販売価格:税込142,450円
  • 焦点距離:16-55mm(35mm判換算:24-84mm相当)
  • レンズ構成:12群17枚(非球面レンズ3枚、異常分散レンズ3枚)
  • 撮影距離範囲:標準:0.6m-無限(ズーム全域)マクロ:30cm-10m(広角)、40cm-10m(望遠)
  • 質量(約):655g(レンズキャップ・フード含まず)
  • フィルターサイズ:Ø77mm

まずは、最高性能の証として「レッドバッジ」を付けたズームレンズ。さすがはレッドバッジだけあってズーム全域、絞り全域にわたり総じて写りが良く、レンズ群の中で上位クラスにAFスピードが速いのも心強いかぎり。もしもレンズが1本しか持てないとしたら、迷うことなく彼の出番。

XF16-55mmF2.8 R LM WR作例(「X-H2S:自然写真by田中雅美/FUJIFILM」より)
XF16-55mmF2.8 R LM WR作例(「X-H2S:自然写真by田中雅美/FUJIFILM」より)
XF16-55mmF2.8 R LM WR作例(「X-H2S: Railway Photography by Makoto Mori/ FUJIFILM」より)
XF16-55mmF2.8 R LM WR作例(「X-H2S: Railway Photography by Makoto Mori/ FUJIFILM」より)

■その2:超望遠ズームレンズ XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR

  • 公式オンラインショップ販売価格:税込108,900円
  • 焦点距離:70-300mm (35mm判換算:107-457mm相当)
  • レンズ構成:12群17枚(非球面レンズ1枚、EDレンズ2枚)
  • 撮影距離範囲:0.83m
  • 質量:約580g(レンズキャップ・フード含まず)
  • フィルターサイズ:φ67mm

35mm版換算で107-457mmのコンパクトな望遠ズームレンズ。とにかく遠い被写体にヨレるヨレる。周囲のありとあらゆる物を手繰り寄せる望遠モンスター。絞りは可変で、インナーズームでもないが、パスポートほどのサイズ感で重量はわずか580gと望遠ズームとしては大変軽い。比較的新しいレンズなのでAFや手振れがよく効き、その点からも使い勝手の良いレンズである。

XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR作例(「X-H2S:自然写真by田中雅美/FUJIFILM」より)
XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR作例(「X-H2S:自然写真by田中雅美/FUJIFILM」より)
XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR作例(「X-H2S: Railway Photography by Makoto Mori/ FUJIFILM」より)
XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR作例(「X-H2S: Railway Photography by Makoto Mori/ FUJIFILM」より)

■その3:APS-Cレンジの超広角レンズ ZEISS Touit 2.8/12

  • 希望小売価格:税込128,700円
  • 焦点距離:12mm
  • レンズ構成:8群11枚
  • 撮影距離範囲:0.18m
  • 質量:270g
  • フィルターサイズ:φ67mm

今回ご紹介するレンズの中で唯一の他社製広角レンズ。35mm版換算で広角18mmのワイドな画角は、主にジンバル撮影で愛用しているレンズ。設定によって画角がクロップされても十分な広角を確保できるので重宝している。通常のNDフィルターが装着できる点も使い勝手が良い。AF性能は最新レンズに劣るが、絞り込んだ際の光芒がとても美しくお気に入りのレンズである。

ZEISS Touit 2.8/12作例(「X-H2S:自然写真by田中雅美/FUJIFILM」より)
ZEISS Touit 2.8/12作例(「X-H2S: Railway Photography by Makoto Mori/ FUJIFILM」より)
ZEISS Touit 2.8/12作例(「X-H2S: Railway Photography by Makoto Mori/ FUJIFILM」より)
ZEISS Touit 2.8/12作例(「X-H2S: Railway Photography by Makoto Mori/ FUJIFILM」より)

■その4:1/2倍マクロレンズ XF60mmF2.4 R Macro

  • 公式オンラインショップ販売価格:税込76,450円
  • 焦点距離:60mm(35mm判換算:91mm相当)
  • レンズ構成:8群10枚(非球面レンズ1枚、異常分散レンズ1枚)
  • 撮影距離範囲:標準:0.6m-無限、マクロ:26.7cm-2.0m
  • 質量:約215g(レンズキャップ・フード含まず)
  • フィルターサイズ:φ39mm

最短撮影距離に縛られて被写体に肉薄できないレンズ達の中で、その呪縛から解き放たれたレンズ。ハーフマクロとはいえ、必要十分に近接撮影できるため、どんなジャンルの撮影にも念のため欠かさず用意するレンズ。AF速度は最新のレンズと比べるとかなり速度や精度ともに見劣りするが、彼にしか撮れない画があるのだから仕方ない。現在、最もリニューアルが待ち遠しいレンズでもある。

(「X-H2S:自然写真by田中雅美/FUJIFILM」より) (「X-H2S: Railway Photography by Makoto Mori/ FUJIFILM」より)

XF60mmF2.4 R Macro作例(「X-H2S:自然写真by田中雅美/FUJIFILM」より)
XF60mmF2.4 R Macro作例(「X-H2S:自然写真by田中雅美/FUJIFILM」より)

■その5:大口径中望遠単焦点レンズ XF50mmF1.0 R WR

  • 公式オンラインショップ販売価格:税込198,000円
  • 焦点距離:50mm (76mm相当)
  • レンズ構成:9群12枚(非球面レンズ1枚、EDレンズ2枚)
  • 撮影距離範囲:70cm
  • 質量:約845g(レンズキャップ・フード含まず)
  • フィルターサイズ:φ77mm

明るいハイスピードレンズ。光量が不足している撮影や、フルサイズ神話「とにかくボカして」に毒されたクライアントさんの場合に登場するレンズ。絞り開放ではオールドレンズ的残収差な雰囲気、少し絞ればシャープ感が増してくる。大きくて重いが絞りF1.0でAFを可能にした秀逸なレンズ。

■その6:軽量設計と光学性能を特徴とするシネマレンズ MKX18-55mmT2.9

  • 公式オンラインショップ販売価格:税込543,950円
  • 焦点距離:18-55mm(35mm判換算:27-84mm相当)
  • レンズ構成:17群22枚(EDレンズ2枚、スーパーEDレンズ6枚)
  • 撮影距離範囲:0.85m/2ft.9in.~無限[マクロ操作時0.38m/1ft.2.9in.~(ワイド端)]
  • 質量:1,080g(レンズキャップ、フード、三脚座、サポートフット含まず)
  • フィルターサイズ:φ82mm

全域で単焦点並みの写りを見せてくれる「さすがシネレンズ」の2本。逆光時、ふんわり朝靄のように拡散するフレアも美しく、ついつい光源をフレームインさせたくなるレンズ。高品位な映像が求められる撮影はもとより、レンズ交換の時間的余裕がないタイトなタイムスケジュールの撮影時にも重宝している。

まとめ

その他にも、さらなる高画素化に対応してリニューアルされた単焦点レンズ3本「XF18mmF1.4 R LM WR」「XF23mmF1.4 R LM WR」「XF33mmF1.4 R LM WR」あたりもAF性能が劇的に進化している点からオススメである。また、秋に発売予定の電動ズーム式レンズ「XF18-120mmF4 LM PZ WR」も出来栄えが楽しみである。

ここに紹介しきれなかったレンズ達も含め、長年仕事の道具として、雨や風、雪や砂など多くの悪条件を共に乗り越えてきた。彼らがトラブルなく活躍してくれるおかげで、問題なく作品創りを続けることができている。

最後に物価高の昨今、コストパフォーマンスにも優れているのがAPS-Cフォーマットを有効活用する富士フイルムの大きなアドバンテージである。著者が富士フイルムを選択し続けている最大の理由は心底ではその点にあるのかもしれない。

筆者が紹介レンズで撮影をした動画(作家紹介のカットに使用)

X-H2S:自然写真 by 田中雅美/FUJIFILM

X-H2S:Railway Photography by Makoto Mori/FUJIFILM

牧一世|プロフィール

合同会社ニゴテン代表/やさしいきおく代表。1974年、熊本県生まれ。 日本映画学校(現:日本映画大学)卒業。 在学中からフランスの映画雑誌「プレミア」の記者として活動。その後、いくつかの職業を経て黒澤フィルムスタジオへ入社。2010年に独立し合同会社ニゴテンを設立。 Webコマーシャルやミュージックビデオなど多くの映像制作を行いながら、日本国内にいち早く一眼ムービーを使ったウェディング動画を広め、海外の手法とは異なるオリジナルのスタイルを提唱。現在ではミラーレスムービーを使用し、写真と動画の両方を駆使するハイブリッド・フォトグラファーとして作品づくりを行う。

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