元CAママ目線で考える「旅育」で身につけたい3つの非認知能力とは?具体例と共に紹介

乗務、そしてステイ先で鍛えられた3つの非認知能力

旅育元CAママ目線で考える旅育で身につけたい3つの非認知能力

近年よく耳にするようになった「旅育」という言葉。

 

旅育とは、旅行を通して子供の心身の成長を促すという考え方で、東洋大学 国際観光学部の森下晶美教授は、「旅育とは、旅は人間性の成長を促すとする考え方で、旅によって得られる知識や興味・価値観の広がり、共感力を人の成長に役立てようとするもの」と定義されています。

 

私自身、2児の母となり、「旅育」を積極的に取り入れているのですが、そのきっかけはCA時代に身につけ、その後の人生で役立っているスキルの多くは、「旅」を通して鍛えることができると考えたからです。

 

CAの仕事を通して鍛えられたスキルはたくさんありますが、なかでも私が最も感謝しているのが、1.臨機応変な対応力、2.コミュニケーション力、3.プラニング力の3つです。

 

これらは、CAの業務そのもので鍛えられた面ももちろんあるのですが、ステイ先で初めての土地に出かけたり、そこで現地の方々と交流を持つなかで鍛えられた面が多いと思っています。

 

具体的に、旅のなかでどのようにこれらのスキルを磨くことができるのか、ちょうど先日三世代旅行で北海道を訪れたので、その時の事例をもとにご紹介していきます。

 

1.臨機応変な対応力とそれに対するポジティブな解釈

旅にトラブルや想定外のハプニングはつきもの。全てプラン通りいくことの方が珍しいのではないでしょうか。

 

そのような環境は、予想外のことが起こった時でも動じることなく、冷静に他のアイディアを考えるというスキルを鍛えるのに最適です。

 

また、トラブルが起こってもうまく対処できた経験は、自信に繋がっていくと思います。

 

私自身、このスキルを意識しだしてから、トラブルやハプニングが起こりそれに対処するごとに、自分が成長していくような達成感を感じています。

 

 

■今回の「旅育」では──

今回の北海道旅行では、4日間の日程のうち、最初の2日間は大雨でした。雲海を見るのを楽しみにしていたほか、気球やファームピクニック、お花畑観賞、川下りなど、天候に左右されるアウトドアのアクティビティをメインで入れていたため、急遽プランを組み直すことになりました。

 

幸い3日目は晴れるようだったので、2日目に予定していたファームでのピクニックと、3日目に予定していたチーズ作り体験とピザ工房でのランチ(雨の日でも影響のないアクティビティ)をチェンジ。

 

 

 

予定がずれ込んだことで3日目に予定していた2ヵ所のお花畑のうち1ヵ所に行けなくなってしまったので、それを4日目に組み込むなど、パズルのようにプラン変更しました。

 

5歳の長男は「雨だったらどうなるの?」と最初は心配していたのですが、「作戦変更すしよう!」と告げ、大人たちで地図を広げながら「この予定はこの日に移動したら?」と作戦会議を開始。長男も「それならこうしたらいいんじゃない?」と、子供なりに提案をしてくれる場面もありました。

 

また、ハプニングへの対処はどれが正解、不正解というものはないと思うのですが、「結果的にこれでよかったね」と自分たちの選択を肯定することも大事だと思っています。

 

今回は雲海と気球は天候不良で諦めることになったのですが、それ以外のプランは作戦通り楽しむことができたので、「うまくプラン変更できたよね」「この方が逆によかったかもね!」と自画自賛。

 

このポジティブな解釈は長男にも移っているようで、私が雲海を見ることができなかったことを残念がっていたら、「でもそのおかげで朝ゆっくり寝れてよかったよね!」、「飛行機の上から雲がたくさん見れたからいいんじゃない?」と励ましてくれました。

 

臨機応変な対応と、それに対するポジティブな解釈というのは、トラブルに負けない強さに繋がると考えています。

 

2.様々な属性の人とのコミュニケーション力

日常生活のなかでは関わることがないような、様々な属性の人と出会うことができるのも旅の魅力の一つ。

 

CA時代、オランダの駅で隣にいた人に切符の買い方を聞いた時、ロシアの地下鉄の車内で降りる駅を教えてもらった時、マレーシアのマーケットで価格交渉した時など、どれも些細なことですが私のなかでとても自信になりましたし、ニュースでの報道などを通して抱いていたその国のイメージが、1人の人間同士として接したことで塗り替えられたこともかけがえのない経験になりました。

家族旅行だとどうしても親が代表して話してしまい子供の出番がなくなってしまいがちですが、意識的に親を介さず子供がコミュニケーションを取れる機会を増やそうと心がけています。

 

 

■今回の「旅育」では──

先日の旅行では、富良野で空知川の川下りを体験しました。途中、浅瀬の河原で休憩をする時間があったのですが、そこで、手で簡単に割れてしまう黒い石がたくさんあることを長男が発見。

 

 

 

「なんで?」と聞かれたので、「ブッチーさん(スタッフの方)に聞いてみようか」と自ら質問するよう促しました。

 

すると「昔海底だったところが盛り上がってきたんだよ。黒っぽい石は泥でできた石で、白っぽい石は貝とか珊瑚のカルシウムでできた石だよ」と教えてくださり、長男は「へぇ〜そうなんだ!」と興味津々で聞いていました。

 

最初は私も側にいましたが、そのうち私のいないところでも長男自らたくさん質問していたようです。

 

もともと人見知りするタイプではないのですが、大自然の中という環境も、初対面の人と打ち解けやすくなることにプラスになっていたのではないでしょうか。

 

また、私自身、旅先で現地の方に直接聞いた一次情報は自分の財産になると感じています。教科書やニュースを通して学ぶよりもずっと深い学びを得ることができることも、旅の醍醐味の一つです。

 

 

次のページ:自ら計画して行動する「プラニング力」を鍛えるには

 

3.自分で計画して行動する力

CA時代、同乗していたクルー達と解散し、慣れない土地で1人になった時、「自分がしっかりしなきゃ!」と強く感じたことを今でもよく覚えています。

 

実はそれまで私は人に頼りがちなタイプでした。地図を読むのが苦手で道を歩く時も一緒にいる人に付いていくことが多かったので、東京出身、東京育ちにもかかわらず、数えきれないほど行っているはずの渋谷や表参道、銀座でもよく迷子になるほどでした。

 

それがステイ先では、事前に得た情報やガイドブックなどをもとに、ホテルのコンシェルジュで道順や所要時間などを確認して自分たちでプランを立て行動することが多かったので、プラニング力がかなり鍛えられたと感じています。

 

当時よく訪れていたミラノやアムステルダムの市内は地図がなくても歩けるほどマスターし、都内よりも自信を持って歩けるようになっていました。

 

家族旅行においては、親が完璧なプランを立て、子供はただ受け身で参加するだけとならないように、一部だけでも一緒にプランを考えるようにしています。

 

 

■今回の「旅育」では──

今回の北海道旅行で最終日に旭山動物園を訪れたのですが、初日の雨で旅程がずれ込んだため、旭山動物園の滞在時間が予定よりも短くなってしまいました。

 

限られた時間のなかで、全ての動物を見ることは難しいので、長男と一緒にHPで園内マップを見ながら、見たい動物とその順序を考えることにしました。

 

まず、赤ちゃんが公開されたばかりのホッキョクグマと、12mもある大水槽やマリンウェイという円柱水槽の中をダイナミックに泳ぐ姿を見ることができると話題のアザラシを見て、最後にペンギンの餌やりの時間に合わせて入り口近くのペンギン館に戻ってくるというプランで、その間にエゾヒグマやエゾシカ、タンチョウなど北海道ならではの動物を入れていきました。

 

 

 

ひらがなとカタカナが書けるようになったばかりの長男は、分からない字は聞きながらも楽しそうにリストを書いていて、動物園を回る時もリスト片手に「次は何番の○○だよ!」とリーダーシップを発揮していました。自分が書いたプラン通り回ることに、達成感を感じたようです。

 

親が全て決めていたら、ここまで自主的に参加できていなかったのではないでしょうか。

自分で計画して自主的に取り組むことで、同じ経験でもそこから得られるものが大きく変わってくるはずです。

臨機応変な対応力とそれに対するポジティブな解釈、様々な属性の人とのコミュニケーション力、自分で計画して実行する力は、CA退職後も私の人生の大きな武器になり、自信を与えてくれていると感じます。

 

子供と一緒に、親である私たちも引き続きこれらのスキルアップを目指していきたいですね。

 

 

 

本記事は著者がForbes JAPAN*に寄稿したものを一部編集した上で掲載しております。

 

© シーエーメディアエージェンシー/ハニーコミュニケーションズ