防衛費「対GDP比2%」は世界標準であり最低ライン!|和田政宗  約5.6兆円という過去最大の要求額となったが、これから予算額を追加で決めていく「事項要求」で、どれだけ上積みできるかがカギとなる。「対GDP比2%」にこだわるのではなく、必要ならば、2%を越えて我が国を守るための十分な予算を確保すべきだ。(サムネイルは防衛省HPより)

強い抑止力となる「長射程ミサイル」

本日、防衛省の来年度予算の概算要求が示された。要求額は、過去最大の5兆5947億円となったが、これから予算額を追加で決めていく「事項要求」で、どれだけ上積みできるかがカギとなる。

台湾危機やロシアの活動が活発化するなか、防衛費を世界標準である対GDP比2%まで引き上げることが重要であり、さらに必要ならば、2%を越えて我が国を守るための十分な予算を確保すべきである。

国家は国土と国民を守るためにあり、いざという時に「必要な装備も能力もないので、国民を守れません」では、国土は侵略され、国民の命が失われる。来年度予算は、我が国がいかなる危機にも対応できるようにするための第一歩であると考える。

政府は今年の「骨太の方針」に、5年以内に防衛力を抜本的に強化することを明記し、来年度予算の概算要求もこの考えに沿ったものとなっている。

なかでも、長射程スタンド・オフ・ミサイル(いわゆる長距離巡航ミサイル)の配備に向けた動きが本格化することは、我が国にとって大きなことである。というのも、長射程スタンド・オフ・ミサイルは、中国など我が国領土を侵略しようとする国に対し、強い抑止力となるからだ。

私はこうしたミサイルの配備を、国会議員になった9年前からずっと提唱してきた。

巡航ミサイルは、低空を飛行し、飛行経路を変更できるため、探知・迎撃がされにくい。そして、日本は誘導精度の高いミサイルを開発する能力を持っており、敵地や敵艦にほぼ100%命中するとなれば、我が国を侵略しようとする国にとっては、確実に反撃され破壊されるので、侵略を思いとどまる可能性が高くなる。

2027年までに台湾侵略を行う危険性

来年度から、長射程スタンド・オフ・ミサイルのうち、地対艦型について量産が始まる。当初の計画では、配備できるのは令和8(2026)年頃とされていたが、早めることができる可能性が高くなった。台湾危機が迫るなか、非常に大きい。

また、8月21日に読売新聞が、「政府が長射程ミサイル1000発の保有を検討」と報道した。政府は具体的な保有数については言及していないが、私は報道にあるように1000発を超える保有が抑止力のためにも必要であると考える。

中国が台湾を侵略する際は、中国が「台湾の一部」と勝手に主張する、我が国の尖閣諸島に同時に侵略する可能性が極めて高い。我が国に接近する艦船を領域内に侵入させない能力を長射程ミサイルによって高め、敵地に反撃する能力を獲得し、侵略を思いとどまらせる確実な能力を最終的に保持することが、我が国の平和を守ることにつながる。

そして、相手を抑止するためには、ミサイルと併せ、洋上における展開能力が必要であると考える。尖閣をはじめ我が国の南西諸島へ侵略しようとしても確実に撃退されると分からせることが重要だ。この地域での展開能力向上のため、F-35B戦闘機が離着陸できる「いずも型護衛艦」の改修が進められており、来年度もF-35Bを新たに6機取得する予算が計上された。

台湾統一を掲げる中国の習近平国家主席が3期目の任期を終えようとする2027年までに台湾侵略を行う危険性は極めて高く、台湾有事=日本有事に対応する装備や能力は予算を前倒して獲得し、早急に整備しなくてはならない。

平和を叫ぶだけで平和は守れない

さらに、来年度予算では、電磁波領域における能力強化にも力が入れられる。この1週間、台湾領土に中国の「民間」とされるドローンが飛来しているが、中国は軍の偵察・攻撃型無人機の活動を活発化させており、8月30日には沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に入ったうえ、先島諸島周辺を飛行した。

我が国を侵略する際には、こうした無人攻撃機も使われることが確定的だ。これらを無力化し墜落させるためには高出力マイクロ波が有効であるが、来年度はマイクロ波照射装置の開発も強化されることとなっている。また、飛来するミサイルを迎撃する高出力レーザーの研究も推進される。

イージス・システム搭載艦の迎撃能力強化、PAC-3といった迎撃ミサイルの配備といった総合ミサイル防空能力の強化も重要であり、「事項要求」の主要な柱となっている。

今回の概算要求では、「我が国への侵攻そのものを抑止するため、スタンド・オフ防衛能力や総合ミサイル防空能力を強化」が第一に掲げられ、初めて「抑止」を最上位で重視するという内容になっている。

防衛費を増額すると、「戦争をする国になる」と一部の人たちが言うが、「抑止」が第一に掲げられており、我が国の平和を守るために防衛費を増額していくという明確な意志が示されている。台湾危機、隣国ロシアのウクライナ侵略など、「あり得ない」と思っていたことが世界で引き起こされている。平和を叫ぶだけで平和は守れない。

どんな時も我が国を守ることが出来る防衛能力と抑止力を持つことが我が国の平和を守ることにつながる。この観点を広く国民にも伝え、必要な防衛費を計上していくことが重要だ。防衛力強化の必要性は、世論調査の結果を見ても国民は強く認識している。どんな時も国民が安心して暮らせる日本国としていかなくてはならない。

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和田政宗

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