【追う!マイ・カナガワ】崩壊進む山小屋対策 ボランティア希望続々 にじむ「丹沢愛」 解体費用調達のアイデアも

鍋割山荘へ運ぶ水を選ぶ丹沢ハイカー。マイカナLINEには、鍋割山荘への〝水歩荷〟が定着しているためボランティアが集まりやすいという声が寄せられた=秦野市

 丹沢表尾根の新大日山頂で崩壊が進む山小屋「新大日茶屋」。現状を伝えた「追う! マイ・カナガワ」の5月の記事や、所有者が名乗り出て解体方法を探った8月10日付の記事を読んだ人から、ボランティアへの参加表明や解体費用調達のアイデアなど、「丹沢愛」が取材班まで続々と寄せられている。

 「身近な大自然の丹沢を愛する者としてお手伝いしたい」「丹沢を愛する登山者としてできる限り参加したい」「微力ながら丹沢を守りたい」。これまでにマイカナのLINEなどに計23件の意見が寄せられ、そのうち19件がボランティアへの参加希望だ。

◆定着した水歩荷

 丹沢ハイカーが積極的なのは、丹沢南部の鍋割山(標高1272メートル)の“水歩荷(みずぼっか)”が定着していることが影響しているかもしれない。「鍋割山で水を運ぶ方の多さを考えると、手伝いを買って出る方も多いのでは」と期待する声も届いた。

 水歩荷は、山頂の山小屋「鍋割山荘」で使う水として、登山口にペットボトルの水が置かれ、登山者は体力に応じて運んでいく。記者もかつて2リットル運んだことがある。

 「鍋割山は水場に乏しい。利用客が増え、食事を作る水が足りなくなることから、登山者に協力を求めるようになったのでは」とNPO法人丹沢自然保護協会の中村道也理事長。それほど古くからの習慣ではなさそうだが、丹沢ハイカーにはおなじみだ。

◆クラファン推す声

 費用の調達にクラウドファンディング(CF)を使う案も多数寄せられた。人気の登山者向け地図アプリ「YAMAP」の運営会社ヤマップが、山の保全活動を発展させて今夏スタートさせた「YAMAP FUNDING」を推す声が目立つ。

 YAMAPは2013年にサービス開始。登山届をアプリから簡単に提出できるほか、スマホの位置情報と地図重ね合わせ、電波が届かない山中でも現在地などが分かる。登山ルートや途中で撮った写真を共有することでポイントを獲得できる。320万回もダウンロードされており、ここで呼びかければ反響はありそうだ。

 同社の千田英史PRマネジャーに聞いてみると、同CFは登山道の整備や植樹などの自然保護活動を支援しており、北アルプスの登山道整備や、アニメ映画「おおかみこどもの雨と雪」の舞台である富山県での植林などの実績があるという。

 寄付にはクレジットカードのほか、アプリで付与されるポイントも使える。まだ、山小屋の解体でCFがスタートした例はないが、千田さんは「廃屋の危険除去は自然保護にもつながる。(立ち上げ可否の)審査は前向きに考えたい。こちらも協力できることがあれば」と答えてくれた。

◆取材班から

 ハイカーを中心に山小屋解体への機運が高まりつつあり、そろそろ行政も行動する時が近づいているのではないか。「提案や多くのボランティア参加表明に感謝している。所有者の方と相談してベストな方法を探りたい」と秦野市の担当者。登山好きの高橋昌和市長の決断に注目したい。

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