廃業へ向かう会社、川に有害物質を流す…代表取締役を逮捕「早く工場売却したくて」 汚染が基準の330倍

川に廃油投棄の疑い、川越の金属加工業者を逮捕

 昨年12月、荒川や支流の麦生川などで有害物質「ジクロロメタン」が検出された問題で、埼玉県警生活経済課と川越署は8月31日、廃棄物処理法違反(不法投棄)の疑いで、川越市の金属加工会社「小糸製作所」=清算中=の代表取締役で同市藤倉1丁目、男(62)を逮捕した。

 逮捕容疑は、昨年11月24~26日ごろ、2回にわたり同社内に設置された排水溝に廃油約660リットルを投棄した疑い。「排水溝に廃油を流してしまいました」と容疑を認めているという。

 同課によると、人体や農作物などに影響はないという。

 廃油は同社が金属製品を洗浄する際に出たもので、本来は専門業者に委託し廃棄する必要があった。排水溝は、雨水などが流れる側溝や排水処理施設などに通じていて、廃油は排水処理施設などを通じて、八幡川や麦生川などに流れていった。

 同社は、昨年11月ごろから廃業の準備を進めていて、男は「早く工場を売却したいという思いから流してしまいました」と供述しているという。

 昨年12月4日、県が荒川で有害物質を検出したと発表し、県警が捜査。県と川越市が実施した河川の水質調査や関係者への聴取などから男を特定したという。

 同課は、小糸製作所も同罪でさいたま地検川越支部に書類送検する予定。

■ジクロロメタン、基準値330倍検出

 県水環境課によると、昨年12月2日、さいたま市桜区宿地内の県大久保浄水場の取水口から1リットル当たり0.0011ミリグラムの「ジクロロメタン」が検出された。

 同月3日、荒川支流の麦生川から環境基準値の34倍のジクロロメタンを検出。5日には、麦生川上流の八幡川でも基準値の330倍に相当する1リットル当たり6.6ミリグラムのジクロロメタンを検出した。

 同課によると、ジクロロメタンは金属製品を製造する際に洗浄脱脂剤などとして使われ、体内に入ると発がん性や肝機能障害などの影響が懸念される。今回は、人的被害や農作物などへの影響はないという。

 川越市は、流出源である金属加工業「小糸製作所」などを相手にジクロロメタンの除去費用など約4千万円の損害賠償を求め、さいたま地裁川越支部に提訴している。

 県水環境課は「少ない量を流しても影響が出ることもある。適正に処理していただきたい」とコメントした。

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