天候による急きょキャンセルも経た週末は、トム・コロネルが独走の完全勝利/TCRヨーロッパ第5戦

 8月26~28日にドイツのニュルブルクリンクで、前戦に続きDTMドイツ・ツーリングカー選手権との併催戦として開催された2022年TCRヨーロッパ・シリーズ第5戦は、悪天候と濃霧の影響によりレース1を日曜順延として、レース2開催が急きょキャンセルされる事態に。そんな想定外のスケジュールにも動じず、トム・コロネル(コムトゥユー・DHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)がポールポジションから“日曜”レース1を制し、快適な勝利を達成。しかし今季も並行参戦するWTCR世界ツーリングカー・カップの後半戦日程が定まらないことから、タイトル戦線で「複雑な状況に置かれる」こととなっている。

 7月のノリスリンク市街地に続き、ふたたびDTMと同じ週末に争われたTCRヨーロッパ第5戦だが、その前戦でポール・トゥ・ウインを達成したマイク・ハルダー(プロフィカー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)は、TCRデンマークでのタイトル争いを優先するためニュル戦を欠場(結果は3戦2勝)。代わってランキング2位につけていたコロネルは、WTCRヴィラレアル市街地戦との日程重複で欠席を強いられた前戦と異なり、ひさびさのTCRヨーロッパ戦に姿を現した。

 ノリスリンクでは代役スティアン・ポールセンがドライブしたアウディRS3 LMS 2をふたたび引き継いだコロネルは、最初のプラクティスで最速のニコラ・バルダン(ターゲット・コンペティション/ヒョンデ・エラントラN TCR)に続き、FP2で幸先よくトップタイムを記録し、欧州格式戦での好調さを維持する。

 その勢いのまま土曜午前の予選にも期待が高まったが、明けた週末のニュルブルクリンクは霧に包まれ、視界が大幅に低下して無期限のセッション遅延となり、その後にキャンセルが決定。さらにDTMセッションとの兼ね合いも含め全体のスケジュールが確保できず、日曜に予定されていたレース2を中止とし、土曜に開催予定だったレース1を日曜に変更するシングルヒート勝負の週末となった。

 この時点で、他のシリーズとの掛け持ち参戦を続けるコロネルらは、タイトルへの挑戦を念頭に「シーズン後半の代替ヒート開催」を希望したものの、シリーズプロモーターを務めるパウロ・フェレイラは、現実的な「実施不可能性」に言及。予選も未開催のため、FP2で最速タイムを記録していたコロネルが、バルダンとフロントロウをシェアして、日曜1発勝負の幕が上がった。

本来、土曜にスケジュールされていたレース1が、急きょ日曜に順延。幸いにして、快晴のドライ条件での勝負となった
前戦からヒョンデにスイッチしたぺぺ・オリオラ(Hyundai N Team Aggressive Italia/ヒョンデ・エラントラN TCR)が4位に

■コロネルが優勝も、逆転戴冠は難しい状況

 スタートでは彼らの背後2列目に並んだジャック・ヤング(プロフィカー・チーム・ハルダー/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)と、コロネルの僚友でもある選手権リーダー、フランコ・ジロラミ(コムトゥユー・PSSチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)が勢いを見せ、1コーナーのブレーキングゾーンで激しくプレッシャーを掛けていく。しかし先頭走者の優位性を活かしたコロネルはポジションを堅守し、2番手バルダンに対しレース前半で2.5秒以上のマージンを稼いでいく。

 一方の3番手争いも最初の2コーナーで決着がつき、ボディを擦り付け合うようにサイド・バイ・サイドを演じたヤングとジロラミは、この接触でホンダ・シビックのステアリング系統が損傷を受けたことで勝負アリ。16周をクルージングしたコロネルがレースをコントロールしてトップチェッカーを受け、2位バルダン、3位ジロラミの表彰台となった。

 現時点で僚友ジロラミとは、残る2戦で獲得できる最大ポイントギリギリの差が開いているコロネルは、そのギャップは「WTCR欠場による差でしかない」と語り、今後2戦のチームメイトの「不幸を願う」ことでしか「逆転タイトルへの可能性は開かれないだろう」との見通しを語った。

「世界選手権のヴィラレアルのために(前戦)ノリスリンクのレースをスキップしなければならなかった。その部分での差が決定的だ」と、それ以前は19点差でジロラミをリードしていたコロネル。

「スパでは彼よりも強かったし、ポール・リカールでも彼よりずっと強かった。そしてここでも彼を上回る速さを発揮できた。でも彼はスマートで、すべてのレースで一貫している。スポンサーの最優先事項は世界選手権なのでそこに異存はないが、追加の代替ラウンドは現実的に難しいことを考慮すると、残る2戦とWTCRの最終日程確定を待つしかないだろうね」

 WTCR最終戦の開催サーキットと日程は、9月初旬のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)で審議される予定だが、続くTCRヨーロッパ第8戦は9月23~25日にイタリア伝統の高速トラック、モンツァで開催される。

今回も3位に入ったフランコ・ジロラミ(Comtoyou PSS Team Audi Sport/アウディRS3 LMS 2)は、91点差のリードを構築した
残り2戦で獲得可能な最大得点は96となり、実質的にトム・コロネル(Comtoyou DHL Team Audi Sport/アウディRS3 LMS 2)の逆転は厳しい情勢に

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