近大の学生が梅学ぶ みなべ町、県農との包括連携で初

梅シロップ作りを体験する学生(8月31日、和歌山県みなべ町気佐藤で)

 JA和歌山県農と包括連携協定を結んでいる近畿大学(本部・大阪府東大阪市)の学生が8月31日、みなべ町を訪れ、世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」などについて説明を聞いたり、梅干しの加工現場を見たりして、紀南の主力産業である梅について学んだ。

 県農と近畿大は、県内の農業を活性化することを目的に2019年3月に包括連携協定を結んだ。取り組みは、新型コロナウイルスの感染拡大により中止していたため、実際の活動は今回が初めて。学部横断型教養講座「もの・仕組みづくり総合学習」を受講する、紀の川市にある生物理工学部と本校の文芸学部の1、2回生計30人が教員6人とともに参加した。

 この日学生はまず、同町気佐藤のJA紀州アグリセンターで梅について説明を聞いた。町うめ課の職員が「みなべ・田辺の梅システム」について「梅の栽培は傾斜地が多く、地質的に適していることからこの地で江戸時代から始まり、400年続いている。農家だけでなく、製炭士などいろいろな人が関わり、生き残っていくために努力してきた。町内の約70%の人が梅に関わり、梅の町として発展してきた」と紹介。紀州備長炭にも触れ、原木林を適切に伐採する「択伐(たくばつ)」により森の環境を維持していることも話した。

 JA紀州の職員は、みなべ町での梅の生産状況や、町発祥の主力品種「南高梅」について説明。梅の消費宣伝活動をする「梅愛隊」の佐々木教人会長は、全国各地を回って梅干しや梅ジュースの作り方を実演し、梅をPRしていることを紹介した。

 その後、学生たちは、梅シロップ作りを体験した。JA職員に倣い、凍らせた梅と氷砂糖を容器に交互に入れた。「1週間から10日ほど置くと出来上がる」という説明を聞き、楽しみにしていた。

 質疑応答では、学生から「梅は食品以外に使い道はないか」「若者にアピールするには健康よりもスイーツ感覚の方がよいのでは」といった意見が出ていた。

 学生らは同町筋にある農園に移動。梅の塩漬けやハウス内での天日干しの現場を見た。農家の説明を熱心に聞き、「ハウス内の温度は決まっているのか」「何日ぐらい干すのか」「雨の日の湿気は大丈夫なのか」など次々と質問していた。

 大阪市在住で文芸学部1年の学生(18)は「梅の栽培や加工は地道な作業だと思うが、思ったよりも機械化が進んでいるように感じた。今回、そんな現場を少しではあるが知ることができてよかった。私たちも何かの形で関われればと思う」と話していた。

梅の天日干し現場を見て、梅干しの作り方などを聞く学生(8月31日、和歌山県みなべ町筋で)

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