3年生、夏物語2022 vol.8 ライフル射撃 3年間の集大成に向けて大会に挑む佐藤宗哉と岩尾歩(由布3年)

「高校から競技を始めても日本一を目指せる。それがライフル射撃だ」。コロナ禍の真っただ中で始まった高校生活。部活紹介で先輩が発した言葉で入部を決めた。あれから2年半が経った。7月にあった全日本ライフル射撃選手権大会(全日本選手権)の男子ビームピストルで優勝した佐藤宗哉は、日本一の目標を達成し、次のステップを目指す。

凝り性で機械好きの佐藤とライフル射撃の相性は良かった。自転車好きで幼い頃から部品を付け替え、家にある電化製品を分解しては組み立てていたという。ライフル射撃は的に向かって何度も当てる正確さの他に、道具のメンテナンスには器用さや精密さが求められる。野畑卓宏監督は「(佐藤は)競技に必要な細部まで計算できる自己分析力が優れ、これだと決めたら貫く頑固さがある」と話す。

入部したときから自分で考え、練習から試行錯誤を繰り返す。足の位置やピストルの構え方、1cm単位で微調整を繰り返し、1週間に1500発撃つこともあった。フォーム改善のためにストレッチを取り入れて柔軟性を身につけるなど、「自分の形」を追い求めた。2年の歳月をかけて、ようやくたどり着いた自分の形。今年3月の全国高校選抜大会で準優勝し手応えをつかみ、全日本選手権で優勝して確かなものとした。

日本一となり、次はアジアの舞台に挑戦する。10月の東アジアユース選手権選考会で上位2位に入り、本戦を目指す。佐藤は「ここまで来たら、もっと上を目指したい思いが強くなった。行き着くところまで行ってみたい」と力強く語った。

東アジアユース選手権出場を目指す佐藤宗哉

佐藤と同時に入部した岩尾歩も3年間で成長した一人。「入部した頃は楽しくやりたいと軽い気持ちだったが、部活は根性なしの自分を鍛えてくれた」と振り返る。しっかり練習して、しっかり結果を出す先輩たちに圧倒され、同学年の部員が減っていく中、「県外の遠征や大会に行って、他校の生徒と仲良くなり、競技に対するモチベーションが上がった」(岩尾)。次第に競技熱が高まり、最終学年になる頃には部員を引っ張る存在となった。野畑監督は「センスがあり人間力がある」と評価する。

大会では目配り、気配りができ、「緊張している選手に話し掛け、『みんなで頑張ろう』という雰囲気をつくってくれる。競技を楽しもうとする姿勢が結果につながっている」(野畑監督)。国体の九州ブロック大会でも、県内の他校の選手とコミュニケーションを取り、『チーム大分』の雰囲気をつくった。栃木国体の出場が決まり、岩尾は「競技を続けるかどうか迷っているが、国体が一区切りになる。出場するからには優勝を目指す」と話す。

岩尾は佐藤のことを「互いを高め合える仲間」といい、佐藤は岩尾に「責任感が強く、いい刺激を受けてきた」と感謝する。向上心の高い2人が、それぞれの目標に向かって3年間の集大成を見せる。

栃木国体ではビームライフルで出場する岩尾歩

(柚野真也)

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