「自分で育てる感覚」経年で風合い変わる!真ちゅうのスプーン【しずおか産】

静岡県三島市で開かれたマルシェです。何かを叩く音が聞こえてきました。子どもたちが、一生懸命金づちで叩いて作っているのは。

<中西結香記者>

「きょうのしずおか産は5円玉と同じ真ちゅうで作ったスプーンです」

真ちゅうとは、銅と亜鉛を混ぜ合わせた金属のことで、5円玉や鍵などにも使われています。こちらのブースには、真ちゅうでできたネコや犬のバッジ、食器などが並び、その隣では、子どもも大人も自分だけのスプーンを作っていました。

<小野さんと参加者>

「うまくできた。うまいね〜」

「やばい。汗が」

「大変だったけど、達成感がある」

「いや〜行ってよかったね。カレーのスプーンも作れて」

「きょうはカレーに」

ワークショップを開いているのは、静岡県沼津市に住む鍛金師・小野裕康さん(71)です。鍛金師とは、金属の伸びや収縮を利用して器などを作る職人です。

沼津市にある小野さんの作業場です。まず、真ちゅうの板にスプーンの形を下書きし、のこぎりとハサミで切りとります。

<小野裕康さん>

「だいたい型でほとんど(スプーンの形が)決まっている。最初、どういう形にするっていうのがちょっと難しい。手に持って、どういう風に馴染むかなって」

切り取った真ちゅうを金づちで叩いて伸ばし、スプーンの形を作ります。

<小野裕康さん>

「金づちはいつも同じ動きをしているので、左手でスプーンを動かしている。少しずつ変えてやるとか、思い切って大きく変えてやるとか、左手の動きが大事」

持ち手の部分も、手に馴染むように伸ばし、10分ほどで完成です。

小野さんが、独学で真ちゅうのスプーンを作り始めたのは今から10年ほど前です。

<小野裕康さん>

「前は建築板金という屋根の外装をやっていたが、60歳くらいになると高いところに登ってやる仕事が、体が老化して危険になってくるもので、他にできる仕事はないかと探した」

そんな小野さんにとって、身近な存在だったのが金づちやはさみでした。

<小野裕康さん>

「金づちもいろんな種類があるし、ハサミも色んな種類があって(スプーンを作るためには)切る用途や切るものによって、いろいろ変えないといけないので、そこのコツが経験上わかっていたので、非常にそこは楽と言えば楽でした」

使う道具や力加減によって、金属の伸びる度合が変わります。1つの作品を作るのに、3本ほどの金づちを使い分けるといいます。いまでは、コップなども手掛けています。

<小野裕康さん>

「真ちゅうの魅力は使っていくと、経年変化で色が変わっていくことなんですよ。それが、おもしろいと言えばおもしろい。ステンレスやアルミに比べると、色が変わって自分のスプーンを育てる感覚が楽しい」

真ちゅうのスプーンは、使い込むことで味のある色に変わり、40年から50年もの間、長く使えるのも魅力です。

<小野裕康さん>

「スプーンを作ることを、子どもたちに知ってほしい。自分の手でも簡単に色んな手作りのものができるって。そこが望みです。これからもそれを子どもたちに教えたいなと思っています」

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