防災の日 警戒される「都市型水害」 東京で整備進む“巨大地下トンネル”

数ある災害の中で近年、東京都内でも重要視されているのが「大雨の対策」です。大都市特有の災害「都市型水害」対策として、現在、東京の地下で建設が進む“巨大トンネル”を取材しました。

ここ数年、都内でも懸念されているのが「大雨による被害」です。さらに都心部ではヒートアイランド化によって局地的な豪雨が多発していて、都市型水害が深刻となっています。東京都はこうした都市型水害を防ぐため、各地に「調節池」と呼ばれるため池の整備を進めています。

今回、その中でも最大規模である環状7号線の地下にある神田川調節池にTOKYO MXのカメラが入りました。トンネル状の施設は、直径12.5メートル・全長4.5キロほどあります。東京都・第3建設事務所の向山公人課長は「54万トンの水をためることができる施設。小学校の25メートルプール1800杯分。都内の小学校のプール全てを合わせた量よりも多いぐらい」と説明します。この施設は実際、2019年の台風19号の時は容量の9割まで水がたまったものの、神田川の氾濫など被害を防ぎました。

そして現在、神田川と白子川の調節池との連結に向けた工事が進められていて、完成すると全長およそ13キロという国内最大の地下調節池になります。これによって140万立方メートル以上もの水がためられ、1時間に100ミリの集中豪雨にも対応できるようになるということです。東京都は2025年度の完成を目指しています。

<マレーシアも注目"東京の治水技術”>

「調節地」の技術は外国からも注目されています。

マレーシアでは近年、大雨による洪水が多発していて、2021年12月には「100年に1度の災害」といわれる洪水災害が発生しました。この時は死者54人、被災者12万6000人などの甚大な被害を受けました。マレーシアの首都・クアラルンプールは東京の2倍の降水量があり、東京よりも深刻な「都市型水害」に悩まされています。

これらの水害対策に向けて、クアラルンプールのマハディ市長は、2022年5月に東京の環状7号線地下調節池を視察するなど、東京都の治水対策の知見を学び、参考にしていく姿勢を示しているということです。

<東京都×クアラルンプール 治水対策で技術共有へ>

こうした経緯がある中、マレーシアを訪れている東京都の小池知事は、首都・クアラルンプールと東京都の間で互いに治水対策の技術を共有していくことで合意しました。

8月31日夜にクアラルンプールに到着した小池知事は、現地時間の9月1日午前9時ごろ、マレーシアのシャヒダン・カッシム大臣とクアラルンプールのマハディ市長と会談しました。この中で小池知事は「特に、気候が世界中で厳しい状況になっている。そういう時でも市民・国民を守るために技術力と誠意を持って、街を守る必要性・意識を共有できれば。技術をお互いに連携できればうれしい」と述べました。小池知事は昨今の気候変動の状況を踏まえ「クアラルンプールと東京の共通の課題は、水との闘いをいかに抑えていくかだ」と述べ、地下調節池など都市インフラの整備に関する互いの技術の交換に積極的な姿勢を示しました。会談は30分ほど行われ、その後、東京都とクアラルンプールとの間で合意書が締結されました。

合意書では東京都とクアラルンプールとの治水対策の共有だけでなく、環境問題についても連携を図っていくことが記され、脱炭素化に向けて交流を深めていくことになりました。

© TOKYO MX