大分トリニータ 予期せぬ事態に問われる「監督力」 下平隆宏監督の手腕に期待

8月21日からの2週間で選手6人、スタッフ1人が新型コロナウイルスの陽性判定を受けて、療養を強いられるなど苦境に立つ大分トリニータ。さらにこの間にFW藤本一輝、DF上夷克典がけがで離脱、そして、FW屋敷優成、MF保田堅心がU-19日本代表に選出されたことは喜ぶべきニュースだが、招集されて2週間弱チームを離れることになる。今季は35人の登録選手でスタートしたとはいえ、厳しい状況下にある。

下平隆宏監督は「意図しないことが起きているが、練習できる人数はそろっている」と話すも、「ここ1週間は特にポジションバランスを整えるためにやりくりが続いており、それはスタッフも一緒」と少し固い表情。それでも選手同士が声を掛け合って戦術以上のものを出そうとしているし、スタッフも普段とは違う仕事をこなしながら、J1昇格のために一丸となっているという。

今季は開幕戦から新型コロナウイルス感染症の影響で連戦のスケジュールになったり、けが人が出るなどもあった。その時期について下平監督は「いろんな選手を使って、どういう形が一番いいのか試合をしながら模索した」と振り返っている。

言葉通り指揮官は、選手の能力が最大限に生かされるポジションや組み合わせを考え、対戦相手や戦況に応じてシステムやメンバーを組み替えながら戦ったことで、意図しないことが起きたときの対処法を身につけた。

試合に向けて調整する選手たち

監督には大きく分けて二通りあって、「こういうプレーをやってほしい」と要求するタイプと、「これさえしなければ、あとは好きにやっていい」と選手に委ねるタイプがある。下平監督は、開幕から数試合は前者であったが、連戦が続き、メンバーがそろわないことが増えて後者に移行した。

決められたことをやり遂げようとすると、相手の出方によってうまくいかなくなり空回りすることがあるのだが、大分はそれが少ない。相手が激しく寄せてくれば裏の空いたスペースを狙うし、それほどプレッシャーがなければゆったりとボールをつないで展開している。味方と相手の状況を見ながら、パス、ドリブル、あるいはサイドチェンジやオーバーラップなど効果的に使い分けており、相手にとってはなかなか対応しづらい。一方の守備は「軽い失点が多い」(下平監督)ともろさを露呈しているが、最低限の制限を設け、個人の判断を重視しながら絶妙なバランスで機能できるように手は打っている。

リーグ戦は残り9試合、12勝13分8敗、勝ち点49で暫定7位の大分は、ここからが正念場となる。保田、MF佐藤丈晟に続き、昨日アカデミーから3人の高校生がJリーグの試合出場が可能となる2種登録に追加された。これが何を意味するのか…。意図しないことは今後も続きそうだが、数々の難問に柔軟に対応してきた指揮官の手腕、そして勝負師として采配に期待したい。

窮地に立たされても笑顔は絶やさない下平隆宏監督

(柚野真也)

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