「チャンスは絶対誰にも渡さない」サッカー元日本代表・三都主アレサンドロがいまだから語る“来日”そして“帰化”

2002年日韓、2006年ドイツと、2度のFIFAワールドカップに出場し、活躍した元サッカー日本代表の三都主アレサンドロさん(以下、アレックス)に、来日のきっかけや当時の日本代表のエピソード、現在の活動について、SBSラジオ『FooTALK』パーソナリティのヒデ(ペナルティ)と鬼頭里枝アナウンサーが聞きました。

鬼頭:アレックスさんは1994年に来日し、高知県にある明徳義塾高校に入学。高校時代に全国大会出場の機会はありませんでしたが、卒業後に清水エスパルスに入団しプロサッカー選手の道に進みました。2001年に日本国籍を取得しました。日本代表としても82試合7得点の活躍をされています。

ヒデ:努力家のアレックスさんは、1999年の清水エスパルスの2ndステージ優勝にも貢献する大活躍を見せ、Jリーグ最優秀選手賞を受賞されましたよね。

アレックス:自分が選ばれるとは全く思っていなかったので、呼ばれた瞬間はすごくびっくりしました。

ヒデ:そもそも、アレックスさんは、どういう経緯で来日されたんですか。

アレックス:その当時、日系人のオオモリカズヨシさんという別のFWの選手を見るために、明徳の先生がブラジルに来ていたんです。私はたまたま、先生たちが観戦していた試合に出場し活躍することができたので「この子も日本に連れていきたい」と声をかけてもらい、日本行きが決まりました。

自らが設立したサッカーアカデミーの選手たちと 画像提供:株式会社ジャパン・スポーツ・プロモーション

来日当時の日本の印象は

ヒデ:当時日本はまだサッカー後進国でしたが、どんな印象を抱きましたか。

アレックス:1993年はJリーグ開幕年でもあったので、Jリーグが非常に盛り上がっていて、ブラジルでも生放送されていたんです。ジーコ、アルシンド、ビスマルクなどのブラジル人選手がいた鹿島アントラーズやヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)の印象が強くあります。

他にも好きな選手がいたので、自分も日本に行きたいと思っていました。特にジーコのファンだったので、話をもらったときには、「ジーコのいる日本に自分も行ける!チャンスが転がり込んできた」という感じでした。

鬼頭:日本で最初に入団した清水エスパルスについてはいかがでしたか。

アレックス:初めて清水エスパルスにテストを受けに行った時、それまでテレビでしか見たことのなかった選手たちが揃って練習していたので緊張しました。大丈夫かなと不安を感じながら、テストを受けました。

ヒデ:この人柄は愛されますね。

鬼頭:アレックスさんの人間性に惹かれるというファン・サポーターも多いと思います。

ヒデ:その後、実際にプロになるわけですが、プロとしてやっていけると自信を持てるようになったのはいつ頃でしたか。

アレックス:いつ頃からかは、自分でもよくわかっていません。ただ、自分に与えられたチャンスを絶対にものにしたいという強い気持ちはテストの時からずっと持っていました。

「プロ選手としてやっていきたい!エスパルスで試合に出たい! 頑張っていたら監督がチャンスを与えてくれるはず。そのチャンスは絶対に誰にも渡さない」そんな気持ちで練習に臨んでいました。

その当時、自分は4人目の外国人選手で、ほかの3人ともすごく上手な選手だったので、頑張らないとクビになるというプレッシャーもあったんです。でも、そういう環境があったからこそ、次に繋がったんじゃないかとも思っています。

ヒデ:高校の時に全国へ行けなかった、その悔しさも爆発したんでしょうね。そして、その後、日本代表に選ばれるわけですが、帰化を考えたのはいつ頃ですか。

帰化を考えたきっかけは

アレックス:1998年くらいだと思います。その頃、呂比須ワグナー選手が日本代表として頑張っていて、フランスW杯にも出場していました。自分もちょうどJリーグで活躍できるようになっていたので、呂比須選手と同じ道に進めたらと。チームメイトとも仲がよかったですし、清水のサポーターもあたたかく見守ってくれていたので、もっと日本にいたい、日本人になれたらいいなと思っていました。

ヒデ:僕らはうれしいですけれど、ブラジルにいるご両親はどのようなリアクションでしたか。

アレックス:最初は両親もびっくりして「あなた、何を言っているの!?」という感じでしたが、少しずつ自分の気持ちを伝えていき、時間をかけて理解してもらえるようになりました。自分が覚悟を持って決めたことなので、今度は青のユニフォームを着られるように努力をしなければ!と思うようになりました。

その後、夢が叶い、日本代表に選出され、2002年日韓W杯にも出場することになります。W杯のエピソードや現在の活動については後編でご紹介していきます。

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