「想定外」の円安140円台 止まらない原材料や燃料の価格高騰…福井県内の企業「乗り切るしかない」

1ドル=140円台を示す外国為替市場のボード。福井県内企業からは「想定外の円安」との声も出ている=9月2日、福井県福井市中央3丁目のますも証券本店

 9月1~2日の外国為替市場で円相場が一時1ドル=140円台をつけ24年ぶりの安値水準となったことを受け、福井県内の企業からは「140円は想定外」との声が上がり、原材料価格高騰や燃料高がさらに厳しくなるとの懸念が相次いだ。今後の相場見通しに関しても「円高になる要素がない」などと円安傾向が続くとの見方は多い。

 ■「乗り切るしか…」

 フクビ化学工業(福井市)によると、樹脂製品の原材料ナフサ(粗製ガソリン)は、4~6月の輸入価格が前年同期比で1.8倍ほどになっており、円安の進行が生産コストの上昇に拍車を掛けているという。担当者は「円安がどこまで続くかが分からず、先が読めない。コスト削減とともに価格転嫁をお願いしながら乗り切るしかない」と話した。

 車載モーター製造などのTOP(越前市)も、輸入する銅線の単価が電気自動車などの需要増で高騰しているのに加え、「円安の影響も受けて仕入れ価格が上昇し、収益に影響している」と担当者。今後についても「円高になるような状況に見えない」と厳しい情勢が続くとの見方だ。

 「140円台(の円安)は今期見通しで想定していなかった」とはドラッグストアのゲンキー(坂井市)の担当者。海外から輸入しているプライベートブランド商品の仕入れ価格が円安の影響を受けており、「売価の値上げや取り扱いを廃止せざるを得ない商品も出ている」とした。

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 ■「景気悪化が心配」

 一方、海外に生産拠点や子会社を持つ上場企業などは、連結売上高が円換算によって上昇するため、円安はプラスに働きやすい。日華化学(福井市)は原材料高の影響を受けたものの、円安が寄与し7月の中間決算発表で通期業績予想を上方修正した。セーレン(同)も「(円安は)経常利益がプラスに働く」としつつ、為替には一喜一憂しないとのスタンスだ。

 眼鏡枠企画製造販売のシャルマン(鯖江市)も中国に製造拠点があり、為替変動の影響を受けにくい経営体制だ。ただ、担当者は「このまま円安が続き輸入物価の高騰がさらに進むと、日本の国内市場の景気悪化が心配」と懸念した。

 ■「いったん達成感も」

 ますも証券(福井市)の担当者は「130円台で『行きすぎの円安』との認識が広がっていたし、年初から春の段階では140円を突破するなんて誰も想定できなかった」と指摘。今後の見通しについては「144円辺りまで下落する余地はあるが、いったん達成感が出てくる可能性もある。日米の金融政策の違いが円安進行の要因となっているが、年内いっぱいは円高にも円安にも大きく振れることはないのではないか」と分析した。

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