今秋公開されるホラー映画「カラダ探し」は、橋本環奈さんら若手人気俳優が起用され公開前から話題になっている。原作は「ウェルザード」のペンネームで作家活動する福井県高浜町の男性(43)が書いたケータイ小説。10年以上前に発表した作品だが人気は衰えず、書籍化などを経て映画化に至った。ウェルザードさんは「だいぶ前に自分の手から離れた作品だし現実味がない」としつつ「ホラーだと毛嫌いせず、映画をきっかけに原作にも興味を持ってもらえたら」と話している。
「カラダ探し」は、抜け出せない時間のループに陥った男女高校生グループが、真夜中の学校を舞台に幽霊と対決する内容。2011年から14年まで携帯電話の大手投稿サイトで連載された。先が読めない展開や心理的に追い込まれるようなスリル感が発表当初から反響を呼び、サイトのホラー部門ランキングで長く人気1位を獲得し“殿堂入り”した。
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人気に拍車をかけたのが各種メディア化だ。13年の書籍化を皮切りに、14年から漫画配信サイト「少年ジャンプ+(プラス)」で漫画化され連載がスタート。コミック本も発刊され息の長いヒットにつながった。
小さいころからゲームにはまり「読書の経験はほとんどなかった」とウェルザードさん。26歳のとき携帯ゲームサイト内の作品投稿コーナーに興味が湧き、話を書いて載せてみようと思いついた。「最初の1行で感情を揺さぶれるのは笑いか恐怖しかない」とホラー小説を書いてみたところ、読者の反応が思いのほか良かった。次第に執筆活動に熱中するようになった。
「カラダ探し」は、読んだ人が場面を理解しやすいよう細かく丁寧な場面描写を心がけ、読者が登場人物になりきれるよう一人称で書いた。執筆期間中、仕事や家庭でうまくいかないことがあり閉塞感の中にいたというウェルザードさん。鬱屈(うっくつ)を作品にぶつけ、ストーリーはどんどん盛り上がっていった。
投稿すると秒単位でページビューが増え、その反応が執筆の原動力に。読者が起床して携帯電話を目にする時間や、仕事や学校の休憩時間を想定し、500字程度の作品を1日の中で10回以上も細切れにアップしたこともあった。
「自分の作品に触れた若者や子どもたちが、本を読むことがおもしろいと思ってもらえたらうれしい」とウェルザードさん。次回作となるホラー小説を、精力的に書き進めている。