単なる風邪? とんでもない 症状次々 コロナ自宅療養体験記 

新型コロナ感染「第7波」が猛威を振るっている。私も10日間、自宅療養した。3日間38度超の発熱、味覚嗅覚障害などの症状があり不安は尽きなかった。コロナ感染拡大からまもなく2年半。陽性になり初めて知ることも多かった。かつてない規模での感染爆発と裏腹の行動制限がない夏である。あくまで個人的な体験だが、参考になれば幸いだ。(新聞うずみ火 栗原佳子)

8月2日朝、体温を測ると37度4分あった。昼前には37度8分、午後には38度2分と徐々に上がり、日付が変わるころには空咳が出始めた。主流のオミクロンBA.5の潜伏期間は平均2・4日というデータがある(茨城県調査)。私は3日前の7月30日、うずみ火主催行事の懇親会で濃厚接触した疑いがあった。

手元には抗原検査キットが一つ。発症前日の1日、事務所周辺の薬局を回り、唯一入手できた貴重品だ。唾液によるセルフ検査タイプで2178円。問題は、いつそれを使うかだった。症状が出てから日が浅いと、例え陽性でも陰性判定となるケースがあるという。

3日朝の体温は38度4分。まだ早すぎるかとためらいつつも、白黒つけたい欲求が勝り開封した。5分で検出という触れ込みで、陰性なら1本、陽性なら2本のラインがあらわれる。が、15分経っても反応なし。陽性でも陰性でもない「無効」の判定だった。スマホで検索すると、抗原検査には「定量」と「定性」があり、定量の方が精度は高い。さらに、市販のキットは定性で「研究用」と「体外検査用」がある。研究用は厚労省の認可外で性能は保証できないという。パッケージを見ると下の方に小さく研究用と表示されていた。

枕元で体温などをメモしたが、字が乱れて読めない。

■発熱外来で確定

やはり発熱外来に行くしかないのか。大阪府のHPで検索すると発熱外来は「かかりつけ患者のみ」「初診もOK」の二通り。PCR検査が理想だが、検査方法を選り好みしている場合ではなかった。大阪市此花区の徒歩圏内、初診OKの病院を探すが、案の定電話がつながらない。夕方、徒歩約20分の距離にあるクリニックが予約を受け付けてくれた。玄関先で医師から右の鼻に綿棒を突っ込まれ、看護師から薬の説明を受け終了。炎天の道を戻り、スーパーで水やレトルトの粥、アイスクリームやスイカなどを急いで買い込んだ。極力、人と接触しないようにしたが、感染拡大も当然だと納得するしかなかった。

検査キットは反応しなかった

結果は翌4日夜に届いた。病院から発症日の確認メールがあり、返信すると、追って「陽性でした。自宅待機期間は12日まで」。翌5日午後、此花区保健福祉センターから厚労省のMy HER-SYS入力の案内がショートメッセージ(SMS)で届く。スマホで入力し、陽性者番号(ID)が付された。その夜、大阪市保健所から、発生届を受理したとして「宿泊療養」「配食サービス」「パルスオキシメーター貸出」などの案内がSMSで届いた。連日2万人超の新規感染者を積み上げる大阪で、その一人に計上されたのだった。

■味、におい消えた

4日に39度4分まで上昇した熱は翌5日、37度前半に下がった。が、喉の痛みや咳はひどくなる一方。ネット通販のパルスオキシメーターが6日に届くまでは数値もわからず、不安な時間はひたすら長く感じた。5日夜には味覚嗅覚が消えた。どちらも薄ぼんやり戻るまで4日かかった。

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大阪市には自宅療養者対象に1週間分の食糧支援がある。保健所のSMSに従い、5日夜、ネットで申し込んだ。玄関に「置き配」する前に配達員から電話があると聞いていたが、隔離最終日の12日になっても音沙汰がない。午前中、担当部署に問い合わせると、此花区は特に遅れているという。きょうが最終日だと伝えると「明日から患者でなくなるので難しいかも」

自宅待機SOS(コロナ陽性者24時間緊急サポートセンター)でも埒が明かず、さらに市保健所の受診相談戦センターに回された。パンク状態の保健所を煩わせるのは心苦しかったが、担当者は親身になって調べてくれた。保健所とやりとりしているまさにその時、インターホンが鳴った。置き配されていたのは配食サービスの段ボール箱。事前に電話がなかった理由はわからない。

自宅療養最終日に届いた1人分の支援物資。ご飯やグラノーラ、缶詰、レトルトの味噌汁など。

21日現在、微熱や倦怠感があるが、同じ場所で感染した一人は体調がすぐれず、通院を余儀なくされている。一方、無症状に近い人もいた。重症化を防ぐといわれるワクチンがどう作用したかはわからない。私はワクチンを2回接種しているが、4回接種した人も同じ場所で感染した。3回接種済みで38度以上の高熱を出した人もいる。

医療ひっ迫を盾に、政府は「5類相当」「全数把握廃止」などの検討に前のめりだ。まともな感染拡大防止策を講じようともせず、本末転倒だと思う。「ただの風邪ではない」未知の感染症の怖さを我が身で思い知り、検査体制が脆弱なまま、行動制限を取っ払った日本の夏におののいている。

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